話題の「ケトン食でがんが消える」は本当か 最新知識を第一人者が解説

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そして、脂質を分解してできるケトン体という小さな粒は、人の細胞が日常的にエネルギー源として使っている、ごくありふれた物質であり、かつ、非常に大切なものなのです。

ケトン体こそが人のメインエネルギーである

ところが、いまだ日本においては残念ながら、このケトン体について医者でさえメインのエネルギー源だと知っている人は非常に少なく、単に「糖尿病ケトアシドーシス」という病気の原因物質にすぎないと勘違いしている人も珍しくないのです。

そのため、きちんと病状も確かめずに、血液中のケトン体の値が少し高くなると、すぐに「危険だ」と思い込む医者もいます。

しかし、ケトン体は人の身体にごく一般的に存在していて、たとえ濃度が高くなってもインスリン作用がある程度確保されていればアシドーシスなど起こさず、健康には何ら問題がないのです。

たとえば、最近になって、胎児や新生児の身体のなかでは、ケトン体は非常に高濃度であることが普通だとわかってきました。

2014年に発表された宗田哲男医師の研究によれば、胎児に栄養を供給している胎盤では、ケトン体の一つである物質(βヒドロキシ酪酸)の濃度を平均すると、現在の成人基準値の20~30倍も高かったのです。

また、新生児の場合でも、成人基準値の3倍というかなりの高い濃度でした。

つまり、赤ちゃんたちは、ケトン体で育っていることがわかったのです。

宗田先生のこの研究は2016年9月に英文論文として医学雑誌に掲載されましたが、私も共著者の一人です。

ケトン体は人体のメインのエネルギー源であり、自然で安全な物質であることを、ぜひ、理解していただきたいと思います。

江部 康二 高雄病院理事長

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えべ こうじ / Koji Ebe

内科医、漢方医。高雄病院理事長、日本糖質制限医療推進協会理事長、江部診療所所長。1950年生まれ。1974年京都大学医学部卒業。1978年から高雄病院に勤務。漢方療法、絶食療法、食養生、心理療法なども取り入れ、独自の臨床活動を行ってきた。1999年高雄病院に糖質制限食を導入し、2001年から本格的に取り組む。2002年に自らも糖尿病であると気づいて以来、さらに研究に力を注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。自身の糖尿病も克服する。

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