そして、資金の流れの変調を見た投機筋が、積極的な円安投資を仕掛けたのだろう。ただし、どこから、どのような形で投機が行われたかを、統計から知るのは難しい。
前回、為替レートと「誤差脱漏」の相関が強いことを述べた。誤差脱漏は、統計的な意味での誤差ではなく、証券投資などの形で捕捉できていない資本取引を表していると考えられる。しかし、誤差脱漏がどの地域との間で生じているかを、国際収支統計から直接に知ることはできない。なぜなら、誤差脱漏は、地域別に定義できる概念ではないからである(国際収支統計においては、次の関係がある。経常収支+資本収支+外貨準備+誤差脱漏=0。したがって、全世界では、誤差脱漏は、経常収支-資本収支-外貨準備によって計算される。しかし、ある地域だけを取り出したとき、経常収支と資本収支の和がゼロになる必要はないから、こうした計算は無意味だ)。
なお為替投機は、先物取引を用いて行われる場合が多いと考えられる。これは、資金の流れを直接には伴わない取引だ。ただし、先物で投機が行われて先物相場が動くと、現物取引との間で裁定取引が生じる。
いま、先物での円安方向の投機が行われ、先物相場が円安に動いたとしよう。この場合、金利差が不変とすれば、金利平価式によって、ドル買い・円売りが利益をもたらす。そこで、このような裁定取引が行われる。その結果、直物レートも円安に動く。したがって、円安投機が行われれば、必ずドル買い・円売りの国際間資金移動が生じるのである。
12年夏以降 株式投資が激増
株式投資は、英国と米国からのものがほぼ同額だ。13年4月には、両国合計で1.7兆円だ。全世界で2.1兆円なので、この両国だけで大部分を占める。
ネット投資の推移を見ると、プラス、マイナスを繰り返してきた。しかし、12年の8~9月頃がボトムで、それ以降、急激に増加した。日本株式への投機は、この頃から始まったと考えることができる。これも、安倍内閣登場よりずっと前のことだ。
13年1~3月の増加額は、両国合計で2.7兆円になる。これが株価を引き上げた。大部分は、短期的な売買益が目的の投機的投資だろう。
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