その証拠に、両国からのネット投資は、5月に激減した。米国のネット投資(3カ月移動平均でなく、原データ)は、4月の9535億円から5月の6013億円に減少。英国からのネット投資は、4月の1兆3574億円から5月には3359億円に急減した。これが5月の株価暴落の原因だ。なお、英国からの投資変化のほうが大きいことから考えると、こちらのほうが投機的性格が強いのかもしれない。
新興国との関係はどうだろうか? 中国との関係では、10年10~12月頃から流出(中国へのネット投資)が拡大している。12年4~6月期に流出が減少したが、一時的なもので、最近では再び増加傾向にある。つまり中国から日本への資金回帰現象は生じていない。アジア全体への投資は、傾向的に増えている。12年以降は、3.5兆~4兆円程度の規模だ。ただし、最近は若干停滞気味だ。
以上をまとめると、次の通りだ。
(1)ユーロ危機の変化を受けて、欧州から日本の短期国債へのネット投資が、11年7~9月期頃に頭打ちとなった。
(2)それによって円高が是正された。それを受けて、円安に向けての積極的な投機が始まった。
(3)円安による輸出産業の利益増大が予想されるので、12年8~9月頃から、日本株式に対する米国からの投機的投資が始まった。
ここで重要なのは、こうした国際的投機資金の流れの変化が、すでに11年下期に始まっていることだ。これは、安倍内閣が金融緩和を標榜するよりずっと前のことである。このことを見れば、円安転換が安倍内閣の経済政策の結果として生じたものではないことが明らかだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら