女子高生が「公園ピクニック」に凝る深いワケ 「おしゃピク」を知っていますか?

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【流行の背景・理由】

以上のように、自分たちなりの「おしゃピク」をして、その様子をSNSに上げることが女子高生・女子大生の間で広がっている。

おしゃピクが若者のSNSに多く上げられる理由を詳しく分析すると、大きく2つの要因にまとめられるだろう。

ひとつには自分の所属しているグループ全体がイケている、センスがいいということを間接自慢できるというものがある。今までの若者がSNSに上げる写真の内容としては、自撮り専用アプリや加工アプリで盛った自分たちの写真が多かった。これは、「こんなに仲が良い友達が自分にはいる」という仲良しアピールするためのものだった。

しかし、おしゃピクに関する写真の多くは本人たちが写った写真ではなく、飾った食べ物や飲み物、小物といったアイテムである。これによって「自分の所属するグループは皆センスがいい」というアピールができる。一見すると、同じような食べ物や小物が並ぶ写真であっても、選ばれたアイテムをよく見るとおしゃれさや流行への敏感さがさりげなく伝わる。つまり、単に「仲の良い友人がいる」という投稿から、「自分と仲の良い友人は皆センスがいい」へと視点が変わってきているのだ。

また、もうひとつの理由としては、日常生活の充実度についてさりげなくアピールできるという点がある。いまや、若者にとって誕生日やカップルの記念日、クリスマスなど、主だったイベントは多くの人が行うため、そのネタで目立つことは難しくなっている。それゆえ、記念日以外の日常をいかに楽しんでいるかをアピールしたいという心理がある。その手段の一つとして、おしゃピクは日常の一部分をおしゃれに見せることができるという点で若者たちから支持されているのだろう。

ピクニック以外にも、若者たちが楽しむ屋外レジャーが今後増えていくと考えられる。

原田の総評:「インスタ映え」の影響はまだまだ広がる

おしゃピクの現状、いかがでしたでしょうか?

私も実際におしゃピクをしている若者たちにインタビューをしたことがありますが、中にはおしゃピクの様子の写真を撮っている時間のほうが、ピクニックをしている時間より長い若者もいました。

おしゃピクは仲間たちとの絆を深める効果があることもさることながら、やはり、その場にいない人たちへのピーアール要素として広がっていった側面が大きいのかもしれません。

自然に癒やされるものであったピクニックから、人工的でインスタ映えのするおしゃピクに広がっていったように、単なるキャンプからグランピングに広がっていったように、今後、「インスタ映え」のために変化していくジャンルはまだまだあるように思います。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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