2人の子どもが思春期真っただ中となった今は、自ら話すことよりも子どもたちの話を聞くことを意識しているという。夕食の食卓で「今日はどうだった?」と聞いても、子どもは無言で重苦しい雰囲気に……というのは思春期の子どもを持つ親なら多少なりとも経験があるだろう。
「最後は本人が話す気にならないと話さないので、無理じいしないようにしています。話す気になれば聞く用意はできているということを子どもたちに感じてもらえるよう、『十分に聞いてあげて返す』という応答的な関係を心掛けています。食卓では話さなかったことも、一緒にお風呂に入ったときに再び持ち出したら話してくれたときには、聞く姿勢を持っていてよかったと思いますね」
自ら考えて、伝えて、合意(納得)する――。日頃、そのプロセスをゆったりと見守れる親がどれだけいるだろうか。でも、堀内さんの話を聞くと、親がほんの少しだけ意識をすれば、十分に対応できると思わずにはいられない。
英語よりも「熱中体験」と「表現力」
グローバル時代のコミュニケーションと言われると、とりあえず早いうちから英語をやらせなければという考えに傾きがちだ。堀内家でも、帰国子女である妻が先生となって子どもたちに英語を教えている。ただし、外国語の習得自体が目的になってしまわないように留意しているという。
たとえば、堀内家は10年以上にわたり、日本への留学生や研修生の短期ホームステイを自宅で受け入れてきた。今夏も、長女の高校を通じて、同い歳の女の子を2週間迎え入れた。「受け入れを続ける第1の理由は、楽しいからです。こういう楽しい経験が、グローバル時代を生きる子どもたちの一助になれば、言うことはないですね」と言う。
「グローバル化に対して『いやだな~』と思う気持ちがあるとすれば、それは変化に対する恐れではないでしょうか。でも、僕は人間の能力って、世界の人たちの間でそう変わらないのではないかと思っています。グローバル時代に求められるのは、スキルよりもむしろ、変化に適応できるためのマインドセット、心持ちだと思います」
堀内さんは、グローバル時代に求められる2つのマインドセットをこう定義する。ひとつは、能動的に変化を起こしたいと思うチャレンジ精神。もうひとつが、自分とは異なる価値観や状況を受け入れられる寛容性(オープンネス)を持つことだ。「この2つを自分でマネジメントできれば、グローバル化という変化に対応できる」と訴える。
チャレンジ精神につながることとして、堀内さんは子どもが何かに「熱中する」経験を大切にしているという。長男が今、熱中しているのはプラモデル。読書好きの長女は、本の世界に入ってしまうと声をかけても反応しないのだとか。
「結局、人間は興味を持ったことにしか意欲は湧かないし、意欲が湧いたことからしか成果は出ないと思うんですよね。分野は何であれ、熱中した原体験が大人 になってからの糧になるはず。好きなことを探したり、与えられたことの中からも好きなものを見いだすという『意欲のマネジメント』こそが大切。でもこれっ て、どんな学校でも学べることです」
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