みずほ銀との連携、商品開発に全力 全社的にスピード感を上げていく−−野中 隆史 みずほ信託銀行社長
--商業銀行であるみずほ銀行(以下みずほBK)からみずほ信託銀行の社長に就任なさいました。内側からご覧になって、印象の変わったところがあればお聞かせください。
信託の機能として四つぐらいに分けられるが、年金の受託・運用ビジネス、それから証券代行、この二つは商業銀行ではまったく垣間見ることのなかったビジネスなので、新鮮で、驚きもあった。不動産関連や信託受益権化のビジネスには従来から関係があったので、驚きはなかったけれど、どういう人材でどの程度のエネルギーを投入してやっていたのかがわかってきた。
不動産については、業界でも人材がトップクラスだし、収益規模も大きいので、「不動産に強いな」というのがいちばんの感想かもしれない。
--不動産は市況の振れが大きく、今は厳しい状況と思えます。
地域によって違うし、ビルによっても違う。個別物件によって勝ち組負け組がまだら模様になっているので、だからこそ、豊富な情報を持っていることが、不動産ビジネスおける勝者になる決定的な要因だと思う。
--みずほ信託銀行はみずほBKとの連携強化、協働を掲げています。強みをどのように生かしますか。
みずほ信託の不動産ビジネスは情報の鮮度もいいし、量も多い。信託銀行本体と、みずほ信不動産販売という子会社と二つのビークルでやってきたが、今後は、みずほBKが持っているお客さんのニーズとか情報とうまくコラボレーションすることによってもっと大きな情報、新鮮な情報が得られて、結果的にもっと、成約率を上げられるのではないかと考えている。
みずほBKとの協働を推進 人材交流を積極化
--不動産以外のところでは?
信託銀行はお客様との取引関係を非常にロングレンジで考えているので、事業承継や相続の問題、どこに経営資源を投下していくべきかという経営上の課題など、さまざまな悩みを持っている企業オーナーへのソリューションの提案力やアプローチの継続性には、みずほ信託銀行のほうが優れている。
4月にみずほBKに新設された「総合コンサルティング部」には、みずほ信託銀行から約20名が転籍した。また部長にも信託出身の執行役員が就任しているが、これも、信託のこうした優れたコンサルティング力をみずほBKの中に移植していこうということだ。
--みずほコーポレート銀行(以下みずほCB)との連携はみずほ銀行との連携よりも進んでいますね。
理由は簡単で、みずほCBのお取引先は大企業だから。連携の仕組みを特に作らなくても、大企業を取引先としている営業マンは、信託や、年金や、証券代行のサービスがきちんと紹介されて、採用していただいているか、意を用いるものなので。それに、私の前任の池田(輝彦)会長がみずほCBの出身なので、トップセールスもしやすかったし、みずほCBの側も池田会長のために協力しようという気持ちも強かった。みずほCBの取引先については60~70%ぐらいまで、連携が進んでいると思う。
--みずほBKとは……。
まだ10~20%。だから、余白があるということ。未来があるということで、仕組みも作ったので、今が2合目だとすると、3、4、5と徐々に進むのではなくて、4、6、8という感じで、スピード感をもって進めていきたい。
私にフィードバックされている情報からすると、すでに、4月以降、劇的に変わっていて、みずほBKの支店長が信託の機能をセールスしていて、大分機運は高まっている。先日、池田会長と京都にお客様訪問に行ったが、みずほBKの支店長もかなり細目にわたってセールス状況を話してくれた。
--仕組み、組織を作りましたが、さらに強化策はありますか。
人材交流は、まずはコンサルティングを中心とした現場の交流が多いのですが、今後は、商品開発や事務のセクションでも進めていきたい。長い間、信託銀行にいると、商業銀行の事務の平準化だとか、商品開発の留意点やアイデアを忘れがちになる。だから、人材交流によって、“前例踏襲型”を打破するというのがテーマでもある。人材交流によって、お互いの組織風土を肌で感じられるので、起爆剤になるのではないか。