みずほ銀との連携、商品開発に全力 全社的にスピード感を上げていく−−野中 隆史 みずほ信託銀行社長
--新規出店もあるのですか。
大分減らしてきて、36店になっているので、あったほうがいいという地域もある。原則、みずほBKの共同店舗という形で新しく増やしていく。信託銀行はその日に必ずブッキングしなくてはならないといったビジネスはあまり多くない、要するに決済は重点ビジネスではないので、勘定を持つことにこだわらずに、ブース方式などマーケットに合わせた店舗形態で出していく。みずほBKとは店舗以外にも、ATM、決済ビークルとして必要なものなど、インフラの共有化も進めていきたい。
もっとスピード感ある文化に ヒット商品で認知度高めたい
--みずほ信託に弱みや課題はありますか。
もっとスピード感があってもいい。みずほ信託はフィナンシャルグループの中にあって、持ち株会社と同様に上場しているから、規律は非常にしっかりしている。あとはもう少しスピード感が欲しい。責任者はリスクヘッジをし合うのではなくて、失敗を恐れることなく、ジャッジしていく文化を創っていきたい。自分が経営トップになったら、そういう企業風土を作りたい、と前から思っていたので。
--みずほBKとの連携と並んで、商品開発意欲を強く打ち出していらっしゃいますね。
信託法が改正されて、いろいろなものが受託できるようになった。信託銀行は銀行法上のバンキング業務ができるうえに、信託業務もできる。だから、ある意味で非常にアドバンテージがある。これからの新商品というのは、信託銀行から発信されるだろうと、前から、何となく思っていた。
国民一人ひとりにとっては、信託銀行はまだ遠い存在。“遺言信託”という言葉が活字によく出るようになったが、それでも、信託銀行でどういう商品、サービスが買えるのかということについて、認知度は低い。ヒット商品を出すことで、信託銀行と国民との距離を縮めたい。
--具体的な商品のイメージは。
私が決めるのではなくて、若い人たちが、日本のキーワード、少子高齢化だとか、いろいろな日本人のユニークな特性、そういう特性を考えながら、新しい商品を目指してもらいたい。私は「失敗を恐れるんじゃないぞ」と言って、それによって、自発的な商品開発が出てくることを期待したい。数少なく戦えば、スピードが遅くなるだけなので、たくさん戦おうと。15回戦って、9勝6敗でいいと言っている。
インフラでは他行と協力 サービスで競争
--ほかにも重視していらっしゃる分野がありますか。
大事なのは、信託は“信じて託される”にふさわしい事務体制を整えていなければならないということ。だから、営業面での拡販とパラレルで、事務の高品質の維持、向上が必要だ。
--業界内の提携についてのスタンスは?
制度変更に伴ってかなりインフラコストのかかる業界なのでインフラは共有化、サービス面では競争、ということで進んでいくべきだと思う。株券の電子化対応で中央三井信託銀行と、年金ビジネスの一部で住友信託銀行と提携している。今後もそういうアライアンスはありうる。
--グループ内上場していますが、この体制は続けるのですか。
コストがかかっている反面、30%以上の株式を、みずほフィナンシャルグループ以外の株主が持っているので、代表訴訟にさらされるリスクの裏腹として、コンプライアンス、リスク管理を含めて自浄作用、規律はすごくある。当面はこのままだと思う。
--サブプライム問題の影響はありますか。
直接的にはまったくない。ただ、金融セクターだけの問題なら、今年中に決着すると私は思っているが、各国の経済に与えたインパクトはものすごく大きい。アメリカの経済は簡単には立ち直らないというのが、個人的な見方。ということは、日本もそんなに簡単に回復しないのではないか。そういう中で、愚直にやっていくということ。