三菱UFJ信託銀行、1兆円級の海外買収を狙う グループの三菱東京UFJ銀行に燃やす対抗心

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資産運用で上位陣にキャッチアップできるか

世界の資産運用額ランキングを見ると、首位はM&Aで拡大した米ブラックロック。2位以下も、老後生活資金のための資産形成などで運用される投資信託のメジャープレーヤーがずらりと並ぶ。三菱UFJ信託(MUFG)は世界37位で、運用資産額でケタ違いの差をつけられている(データは2015年12月)。

世界の銀行総資産ランキングでは、MUFGは中国工商銀行に次ぐ第2位(2016年6月、トムソン・ロイター調べ)。商業銀行に比べ、圧倒的に存在感が小さい資産運用の分野でも上位を狙っていくのがMUFGの戦略だ。

その戦略を担いながら、グループ内で「独立王国化」を狙っていくのが三菱UFJ信託の本音だろう。「フィデューシャリー・デューティー」では、資産運用会社が、銀行や証券など販売会社のいいなりに販売手数料を第一の目的にした投資信託づくりを行わないよう、金融庁がその経営の独立性を強く要求している。この利益相反管理により、三菱東京UFJなどは資産運用事業に関して口を出せない状況が担保されつつあるからだ。

海外では目下、JPモルガン・チェースの業績牽引役の一つが資産運用会社である。ゴールドマン・サックスでも、本家より資産運用会社のゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのほうが「格上」とみられる状況だ。冒頭の池谷社長の発言は、こうした海外での金融機関の序列の違いも意識したものともいえる。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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