三菱UFJ信託銀行、1兆円級の海外買収を狙う グループの三菱東京UFJ銀行に燃やす対抗心

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資産運用をグループの中核に。海外M&Aのチャンスを狙う池谷幹男社長(撮影:今井康一)

「理想型としては、ブラックロックやバンガードなど欧米の資産運用大手のような発信力、発言力を持った会社になりたい」

こう、三菱UFJ信託銀行の池谷幹男社長は意気込みを語った。8月1日、5000億~1兆円の海外でのM&Aを通じて、運用資産額100兆円超、世界15位以内の資産運用会社を目指すという構想をブチ上げた。

池谷社長の鼻息が荒いのには理由がある。

そもそも、三菱UFJ信託は、三菱東京UFJに対して、対抗心が強く、距離があって、グループ内でもどちらかというと遠心力を働かせる存在だ。

2000年前後に国内金融機関の大再編が進められ、メガバンクが誕生したが、三菱信託(現三菱UFJ信託)と東京三菱銀行(現三菱東京UFJ)とは、当時のトップ同士の折り合いが悪く、三菱信託はグループの異なるほかの信託銀行との提携などを模索していた。

最終的に2001年4月、現在の三菱UFJグループ(MUFG)につながる三菱東京フィナンシャル・グループへ合流したが、当時のトップは「(統合の狙いは)専業信託の三菱信託としての位置づけを残せることだ。可能な限り戦略の変更がないことで合意できた」(内海暎郎・三菱信託銀行社長<当時>、『週刊東洋経済』2000年5月20日号)と語っていた。

この統合の際、東京三菱銀行は、統合合意への見返りとして、子会社だった日本信託銀行を三菱信託(現三菱UFJ信託)に吸収合併させており、「三菱信託は実を取った」とも業界では言われた。

法人貸出部門を譲渡し、投信会社を子会社に

グループ合流後も、三菱UFJ信託はそれ以前の事業を守り、グループ内再編でほぼ無風だった。ところが、その雲行きが昨年から変わってきた。

金融庁が推進する「スチュワードシップ・コード」(責任ある機関投資家の諸原則)の取り組みにおいて、信託銀行が資産運用部門と法人貸出部門の2つを持っていることに批判が続出した。貸出部門で顧客となっている企業に対して、資産運用部門はその企業の株主として公正な株式の議決権行使が行えるかという利益相反問題がクローズアップされたためだ。

みずほフィナンシャルグループが昨年10月、信託銀行から資産運用部門を切り出すなど、こうした問題に対応してグループ内再編が業界で相次いだ。そうした中で、MUFGも今年5月、三菱UFJ信託から法人貸出部門を切り出し、商業銀行である三菱東京UFJに移管させる計画(2018年4月予定)を発表した。三菱UFJ信託にとってはグループ内で独立を保持してきた路線が初めて崩れ去った瞬間だった。

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