外国人患者が来院した時にどう対処すべきか 文化の違いを知らなければ混乱必至?
また、医療機関による外国人患者向けに必要な問診票、同意書の作成や翻訳にかかる費用について、補助対象を中小病院や診療所にまで拡大。都福祉保健局医療政策部の久村信昌・地域医療担当課長は、「現場からの、急増する外国人を受け入れるには大病院だけでは足りず、中小病院や診療所の受け入れ態勢を充実させるための支援が欲しいとの要望に応えた」と説明する。
東京都医師会(都医)の危機感も強い。都の在留外国人は今年5月に50万人を超え、都内の診療所などを在留外国人が受診する光景は珍しくない。しかし、これから東京五輪・パラリンピックに向けて訪都外国人が急増すれば、その影響は小さくないとみている。
都医で外国人医療を担当する島崎美奈子理事は、「外国人観光客が救急で大学病院などに搬送されるケースが増えている状況です。そのうちの軽症例に診療所で対応する必要があります」と話す。
島崎理事は、観光スポットや宿泊施設が多い地域の診療所は特に対応を迫られる可能性が高いと予測している。「言葉の通じない外国人観光客の診療に手間取り、通常の診療に支障を来す事態になるかもしれません」と指摘する。
島崎理事は都心で、眼科クリニックを開業している。外国人が受診するケースは少なくない。「英語圏への対応はできますが、訪日外国人のほとんどがアジア系。言葉や宗教上の問題で良好なインフォームドコンセントを得ることが難しい場合も多く、訪日外国人も不意の急病で、渡航先で受ける医療に不安を感じています。後々の医事紛争のリスクも高まるのではないかと思います。未払金や保険への対応も急務です」という。
都医では近く、委員会を立ち上げ、外国人に医療を提供するための方策を協議する。都医の前副会長で、これまで都と一緒に外国人医療対策に携わってきた近藤太郎顧問は、「まずは実態調査をして、それをベースにしたモデル事業を始めることが先決です。その中で、医師会ができる支援のパターンを示して、診療所の先生方に医師会のサポートを利用していただくことになると思います」と話す。
すべて自前ではなく外部のマンパワー使って
今年4月に開学した国際医療福祉大医学部(千葉県成田市)は、国際医療人材を養成することが特長の一つになっている。医学部1年生の英語の授業は約420時間。一日3~4時間は英語による授業がある。同大の医学生は卒業後には全員が英語によるコミュニケーションを使って外国人患者の診療を行い、国際学会などで活発に議論できる能力を身に付けることが期待されている。