外国人患者が来院した時にどう対処すべきか 文化の違いを知らなければ混乱必至?

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効率的なアウトソーシングを勧める押味准教授

同大医学部医学教育統括センターの押味貴之准教授は、医学英語教育と医療通訳の第一人者だ。医師として、医学生に医学英語を教えている。東京五輪・パラリンピックに向けて想定されることを聞くと、「たくさんの訪日外国人が患者さんとして医療機関を受診されたら、最も混乱するのは、『入り口』と『出口』、つまり医療機関の受付と会計だと思っています」と話す。

さらに、「受付では、その人が旅行保険に加入しているかどうかを確認しなくてはなりませんし、旅行者の家族に連絡する必要も出てきます。さらに会計になると、診断書やカルテのコピー、それに領収書すべてを英語で出さなくてはならないので、訪日外国人が受診されることを想定したある程度の準備が必要です」と話す。

押味准教授は訪日外国人への対応をすべて自院ですることはせず、効率的にアウトソーシングすることを勧めている。多言語対応の問診票は、厚生労働省のウェブサイトで入手可能であるほか、世界共通の医療機器などの説明は、インターネット情報を活用できる。すでに電話を使った医療通訳のサービスも多数そろっているほか、スマホアプリも登場している。

また、訪日外国人には丁寧なインフォームドコンセントが必要になるという。医師が十分に説明したつもりなのに理解されず、「説明されていない」などと水掛け論になる可能性がある。そこで押味准教授が有効だと言うのが、患者が理解できたかを確認する方法の一つである「ティーチ・バック」(Teach Back)だ。治療や手術に関する後遺症や合併症のリスクを患者に説明するだけにとどまらず、その内容を患者に話してもらうのだ。

費用負担にスポーツくじや診療報酬案が浮上?

訪日外国人対応については、医療通訳にかかる人件費などの費用を、医療機関が患者サービスとして負担するのか、それとも患者自身などが負担するのかが課題となっている。医療現場では例えば、東京都の宿泊税、いわゆるホテル税として徴収した税金の一部を、外国人医療のための費用に回すといったアイデアもある。

ホテル税は年間20億円超の税収がある。その財源を都は外国人観光客を増やすための施策や都の観光振興に充てている。そこで、その利用範囲を医療にまで拡大してはどうかという考え方だ。また、スポーツくじの収益金を活用する案や、医療機関の負担を診療報酬で手当てすべきとの声もある。訪日外国人のさらなる増加を打ち出した政府は、20年の東京五輪・パラリンピックを3年後に控え今、さらに知恵を絞る時期に来ている。

(文:君塚 靖)

「CBnews」編集部

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