ブリヂストンが「滑らないタイヤ」で狙う先 なぜ今夏は冬用タイヤが次々発表されるのか

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発進時の空回りとブレーキの効きをスパイク並みに向上させるべく、各社とも3~4年ごとに新製品を発表し性能の向上に取り組んできたが、「VRX2はスパイクタイヤとほとんど変わらなくなった」と新モデルの開発者は自信をみせる。

7月20日の新製品発表会では一般試乗体験会が行われた。スケートリンクと一般道を試乗するもので、参加した一般ユーザーは降雪の少ない首都圏在住の人ばかり。その多くが冬用タイヤは使用していなかった。雪道に慣れている北海道や北東北のドライバーに比べて、スタッドレスタイヤの関心の低い首都圏など都市部ユーザーの掘り起こしは大きなテーマだ。

スケートリンクでの試乗体験会も行われた(記者撮影)

「大都市圏でも路面凍結によるスリップなどのリスクは高い」とブリヂストンタイヤジャパンの上田達也常務は強調する。都市部で冬の道に慣れていないドライバーの潜在需要に期待を寄せる。

前モデル「VRX」からは乾燥した路面での性能向上を打ち出し、降雪がない時期から日常的にスタッドレスタイヤを装着するユーザーにも配慮してきた。

新モデルの「VRX2」では乾燥路で気になった「ヒャー」「シャー」といった高周波ノイズの低減を実現。スタッドレスタイヤは普通タイヤに比べ軟らかいために、コーナリング時に横揺れするというマイナス要素もタイヤの剛性を高めて解消した。試乗した一般ユーザーからは「タイヤの軟らかさは感じず、コーナリングもスムーズだった」との声が聞かれた。

タイヤの原料価格が上昇中

寿命も長くなるよう改善したという。「消しゴムは滑らせる(こする)ことでゴムが減るが、押し付けるだけでは減らない。タイヤも原理は同じだ」(消費財タイヤ開発担当の井出慶太執行役員)。路面としっかり密着させたことで、摩耗ライフを22%向上し、うまく使えば「1シーズン余計に走ることでできる」(同)。

足元ではタイヤの主要原料である天然ゴム、合成ゴムは値上がりしている。ブリヂストンでは今年3月に6~10%の値上げを発表しているが、利幅の縮小が懸念される中で、新モデルを投入し値崩れを防ぎたいという狙いも見え隠れする。状況は各メーカーも同じ。原価高の中で冬用新タイヤの役割は大きい。

タイヤの売れ行きは降雪があるかなど天候要因もさることながら、首都圏などのユーザーをつかめるかが重要なカギを握りそうだ。各社の新商品が入り乱れる冬用タイヤ商戦はすでに熱気を帯びている。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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