――なるほど。そうすると、社員研修が肝となりますね。
「シャングリ・ラ・ケア」というプログラムで社員をトレーニングしています。社員ひとりひとりの行動のガイドラインです。
私は「サービス」という言葉は使いたくありません。サービスはガソリンスタンドでもどこでも受けられますので。われわれが注力するのはホスピタリティです。
おカネがあれば、シャンデリアをたくさん使ったゴージャスなホテルは簡単に建てられますが、ソフト面、人がどうやっておもてなしをするか、を確立するのは非常に難しい。だからスタッフを採用する際に、当ホテルにとって的確なスタッフ、「ライト・ピープル」を選んでいます。
――ライト・ピープル、ですか。そうやって採用した従業員はどうやってトレーニングしているのですか? 分厚いマニュアルがあるのですか? あるいは権限委譲で個人の裁量が非常に大きいとか。
分厚いマニュアルはありません。ロボットのような人間味に欠ける対応でなく、自然なおもてなしが大切だからです。
もちろん、コーヒーのサーブの仕方などの技術面はOJT(職務内訓練)で教えます。「バディ・プログラム」といって、新人1人に先輩1人がついて1カ月以上一緒に働いて鍛えます。「オリエンテーション・チェックリスト」があって、入社が決まった社員がお客様に対応する前に、必要なトレーニングをきちんと完了しているかチェックしてから、実際の接客をさせています。
権限委譲については、「デリゲーション・オブ・オーソリティ」があります。社員1人ひとりが役職や立場に応じて上限金額に差があるものの、上司に確認しないでも裁量で決められる予算枠があります。
フロントで何かアクシデントがあったときに、お客様に「では、この金額でクレジットを差し上げられます」(値引きやサービス)と決裁する権限を与えています。たとえば「レストランでデザートをサービスします」とか。この権限によって、社員1人ひとりが自信を持って対応できるようにしています。
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