そもそも「内助の功」なる言葉は米国には存在しない。しかし、男女がそれぞれの立ち位置で戦うパートナーとして、女性が男性を叱咤激励する役割は、重要なマナーとして厳然と存在する。
メラニア夫人はファーストレディとして、夫の手を振り払うことによって、孤独な戦士としての大統領をしっかり励まし、同時に「常在戦場」のトランプ氏のために、彼を攻撃・中傷する米メディアのハリウッド的な好奇心を、その手で振り払っていたのではないか。
メルケル首相を「オープンフェイス」にさせた
今回、メラニア夫人は最高レベルのファーストレディとしての役割を演じたと言っていい。彼女はその術をどこで学んだのか。
これまでの米国大統領夫人には、ある共通した経歴がある。ミシェル・オバマ、ローラ・ブッシュ、ヒラリー・クリントンの各氏は、いずれもガールスカウト経験者である。彼女たちは、過酷なキャンプ生活のなかで、さまざまな訓練を経験し、どんなときにも、いかにサバイバルする(生き残る)か、という術を学ぶ。それがファーストレディとしての役割にも活かされる。
旧ユーゴスラビア(現スロベニア)出身のメラニア夫人は、そんな米国流の豊かな少女時代の経験はないものと推察される。ユーゴ内戦で国を追われるように渡米し、米国籍を取得したのは2001年だった。外国出身のファーストレディは史上2人目、190年ぶりである。
そんな出自、経歴が今回の国際舞台では十分に活かされた。ドイツのメルケル首相やロシアのプーチン大統領を目前にして、ユーゴ時代に培われたドイツ人やロシア人に対する、しかるべき振る舞い方がはっきりとよみがえり、そのノウハウをトランプ氏にしっかり伝授することができた。
その証拠に、米国で最初に会ったときには握手もしなかったメルケル首相に対して、今回、トランプ大統領は打って変わった表情で握手をしてみせた。そのトランプ氏の思いもかけぬ親しげさに対して、メルケル氏は「オープンフェイス」で応えた。
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