国民の厳しい視線で「安倍戦略」は狂い始めた 8月改造で出直し狙うも、党内で批判が高まる
「こんな人たち」を敵に回して東京都議選で歴史的惨敗を喫した安倍晋三首相が8月初旬に自民党役員・内閣改造人事を断行して態勢立て直しを図る。「加計学園疑惑」などで内閣支持率が急落したことによる"1強体制"の危機を人心一新で切り抜けようとの思惑だ。
2012年末の第2次安倍政権発足からの内閣の骨格は維持しつつ、「問題閣僚」を一掃した「仕事師中心」(官邸筋)の新布陣が「結果を出すことで国民の信頼回復」を狙う。だが、政府・自民党が積み重ねてきた安倍政権のおごりへの国民の視線は厳しく、来年9月の自民党総裁3選と悲願の憲法改正実現への「安倍戦略」も狂い始めている。
ハンブルクのG20出席などで訪欧中の首相は9日午前(日本時間同日夜)、滞在中のストックホルムで同行記者団と懇談し、「来月早々に自民党役員人事と内閣改造を断行して、人心を一新する。安定感と改革突破能力を兼ね備えた態勢を整えたい」との方針を表明した。首相が約1カ月も前に人事の日程や構想に言及するのは異例で、支持率急落への危機感もにじむ。今後の政治日程などを考慮すると改造人事は8月3日となる方向で、前回人事からちょうど1年で「第3次安倍第3次改造内閣」が発足することになる。
党・内閣の「骨格」維持、岸田氏は党3役へ横滑りも
首相は新体制について「骨格をころころ替えるべきでない」と述べ、麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官を留任させる方針を表明。これと連動して自民党の高村正彦副総裁と二階俊博幹事長の再任も確実だ。麻生、菅両氏は2012年暮れの第2次政権発足時から首相を支えており、「安倍改憲」の党内調整を委ねられた高村氏と、次期衆院選の指揮を執る二階氏を続投させることで"1強体制"の維持を内外にアピールする狙いがある。
その一方で首相は、石破茂前地方創生相と並んでポスト安倍の有力候補とされる岸田文雄外相については「留任か党3役への横滑り」(首相周辺)を検討しているとされる。岸田氏周辺からも「来年9月の総裁選をにらんで、閣内から抜け出す必要がある。ベストは幹事長だが、政調会長でも構わない」(側近)との声が漏れてくる。
ただ、首相サイドからは甘利明前経済再生相を「党の要職に就ける」との構想が流されており、「甘利政調会長・岸田総務会長という人事が“落としどころ”」(自民幹部)との見方も広がる。甘利氏は第1次政権時から首相を支える盟友で政策通、というのが理由だが、昨年春に「金銭スキャンダル」で閣僚辞任に追い込まれた経緯もあり、「疑惑への説明もしないままでの再登場は、新体制の火種にもなりかねない」(自民長老)との不安もささやかれている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら