国民の厳しい視線で「安倍戦略」は狂い始めた 8月改造で出直し狙うも、党内で批判が高まる

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首相は欧州訪問の日程を短縮して11日、帰国した。福岡・大分での豪雨災害に対応するためとされるが、10日に"首相抜き"で行われた「加計学園疑惑」をテーマとする衆参両院での閉会中審査でも、野党側は「政府側のきちんとした説明はなく、疑惑は一段と深まった」(民進党幹部)として、早期の臨時国会召集と7月中の首相出席の下での衆参両院予算委集中審議を強く求めている。

自民党側は「新しいことは何もなかった。言った、言わない、の繰り返しでは(集中審議を)やる意味がない」(国対幹部)と拒否の構えだが、世論調査で「政府側の説明には納得できない」が圧倒的多数なことから、「審議に応じて、首相自身がきちんと説明しないかぎり、事態は打開できない」(自民長老)との声も相次ぐ。

「2羽目、3羽目のキジが鳴く」と石破氏

来年9月の総裁選出馬が確実視される石破氏は10日夜の民放テレビ番組で「きちんとものを言わないと、(政府と)国民との感覚が離れてしまう。それはやってはいけない」と首相らの対応を批判するとともに、「キジは鳴いたら撃たれる。1羽撃たれて、その後、だめだったらどうしようもないが、2羽目、3羽目、4羽目は必ず自民党にいる」と警告した。

岸田氏も「政権運営は忍耐や謙虚さが必要」と暗に首相を批判するなど、これまで慎重だった来年の総裁選出馬を視野に入れ始めている。石破、岸田両氏とも「性急な憲法改正」には慎重な立場で、党内でも「秋の臨時国会への新たな自民党改憲案の提出はもはや困難」(岸田派幹部)との声が広がる。

与党・公明党の山口那津男代表も「改憲は政権の取り組む課題ではない」と主張する。首相自身は「改憲への日程は変えない」と繰り返すが、これまでのように「すべて首相の言うとおりに、という雰囲気はなくなった」(自民幹部)だけに「強行突破を図れば、党内政局になって、3選も危うくなりかねない」(同)のが実情だ。

中谷元前防衛相は民放テレビ番組で「政治家は人の意見を聞く耳が大事。特に『かきくけこ』で人の言うことを聞くべきだ」と首相に苦言を呈した。中谷氏は「かきくけこ」とは「家内(妻)の言うこと、厳しい意見、苦情、見解の異なる人、こんな人たち」と解説した。「(ヤジも)国民の意見として聞かなければならない。多様性を吸収しないと良い政策ができない」との指摘だ。まさに「キジの2羽目、3羽目」(自民長老)だ。

人事断行まであと3週間余り。はたして「明快で適切な安倍人事」で態勢立て直しができるのか。帰国した首相を待ち受けるのが「暑く寝苦しい夜」であることだけは間違いない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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