国民の厳しい視線で「安倍戦略」は狂い始めた 8月改造で出直し狙うも、党内で批判が高まる

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問題は骨格以外の新体制の顔ぶれだ。第2次政権発足以来、多くの新人閣僚が誕生したが、スキャンダルや放言・失言などで辞任に追い込まれる人物が後を絶たなかった。現内閣でも「(東日本大震災が)東北でよかった」発言で復興担当相を辞任した今村雅弘氏だけでなく、山本幸三地方創生相の「学芸員はがん」発言なども厳しく批判された。

なかでも退場の筆頭候補は稲田朋美防衛相。南スーダンに派遣された自衛隊PKO部隊の「日報隠蔽」問題をはじめ、「森友学園疑惑」でも同学園の籠池泰典前理事長の弁護人として出廷した事実を国会答弁で否定し、公文書を突き付けられて「撤回・謝罪」に追い込まれるなど、「問題閣僚の筆頭」(自民若手)だった。しかも、都議選の自民党候補の応援演説での「自衛隊としてもお願いしたい」などと弁護士出身とも思えない失言で自民惨敗の"戦犯"の1人と批判されたが、「首相の秘蔵っ子で、更迭すると任命責任に直結する」(首相側近)との理由で続投している。野中広務元自民党幹事長は「首相が稲田氏をすぐ辞めさせていれば都議選もあんなには負けなかった」と指摘した。

「秘蔵っ子」退場の一方、「目玉閣僚」は?

このため首相サイドは「今回の人事でまた問題閣僚が続出したら、1強どころではなくなる」(側近)との危機感から「事前の身体検査(閣僚候補の身辺調査)を徹底するとともに、過去に問題を起こさず評価も高かった閣僚経験者を要所に配置すべきだ」(同)との声が広がる。首相も「経済最優先」を繰り返し、「働き方改革」や「人づくり革命」を推進することで「一つひとつ結果を出す」と強調していることから、新布陣は「新人も含めまじめな政策通の実務型で固める」(自民幹部)ことになりそうだ。

ただ、自民党内には約60人の「閣僚待機組」が存在する。各派閥の領袖が事前に「入閣リスト」を作って首相サイドに起用を求める慣行もなお健在だ。首相は「派閥の事情など考慮せず、人物本位で選ぶ」と繰り返すが、「人事は1人の味方を作っても5人を敵に回す」(自民長老)のが永田町の定説だけに、派閥均衡を破れば首相の求心力低下にもつながりかねない。

さらに、「出直し効果」にこだわるなら「目玉閣僚」も欠かせない。今回も早い段階から小泉進次郎党農林部会長(当選3回)や橋下徹前大阪市長の起用が取りざたされている。小泉純一郎元首相の次男で国民的人気を誇り、都議選でも応援に引っ張りだこだった進次郎氏を閣僚に抜擢すれば「内閣支持率が10ポイントは上昇する」(自民幹部)との見方は多い。また、折に触れて首相と会談している橋下氏は知名度抜群で「改憲勢力」の日本維新の会の創始者だけに、閣僚に起用すれば国会での憲法改正論議の促進にも結び付くとみられている。

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