■話し慣れていないタイプ
次は、普段ヒアリングやインタビューを受ける経験をあまりしていない人の場合です。前提として、少し長めに時間をもらいます。人には話しにくいプライベートな話、心の痛みに触れる話を聞き出す場合なども同様です。
たとえば、先日上梓したビジネスノンフィクション『道を継ぐ』が、まさにこれにあたります。この書籍は、8年前に49歳の若さで亡くなったある伝説の女性について、生前の彼女を知る191人に取材をさせていただき、そのエピソードをまとめたものです。
亡くなった方との個人的で大切な思い出を語っていただくので、少しでも話しやすいように、インタビューではいくつかの工夫をしました。
まず、できるかぎり、仲の良い人たち数人にまとめて話を聞く「グループインタビュー」の形式にしました。昔の思い出というのは、1人ではなかなか思い出しにくいものですが、誰かが口を開いてくれると、どんどん記憶の扉が開いてくるものです。
沈黙の時間を怖がらない
また、相手が多くの人に語っていない話を聞き出したいときには、最初にこちらが自己開示をします。「実は私にもこんな経験がありまして……」と伝えることで、相手も心を開いてくれる可能性が高まります。心理学ではこれを「返報性の原理」といいます。「聞く」だけではなく、こちらも「話す」ことで、相手にも「話してあげよう」と思ってもらえるのです。
そして何より大事なのは、相手が考えをまとめているときにおきる「間」を怖がらないことです。相手が言葉を選んでいるときに「たとえば●●みたいなことはありませんか?」などと、こちらが答えを誘導してしまうと、せっかくのオリジナリティのある言葉を引き出せなくなります。話し慣れていない人には、沈黙の時間も、必要な時間だと思って、ゆったり構えましょう。
次回からも「書く」ことが楽になる、ちょっとしたコツについてお話しいたします。
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