奈良の名門校は「読み聞かせ」で秀才を育てる

東大寺学園「雑談だらけ」の読書授業

ここまで約25分。ちょうど授業の半分が雑談である。しかし松本教諭の思いが詰まった雑談だ。生徒たちはそのメッセージをしっかりと受け取っている。

「本を読むのも楽しいが、作るのも楽しい」というメッセージに実感がこもる(写真は筆者撮影)

先生が背中に2本の長い棒を差していた理由

「お母さんたちが、『ちゃんと授業してるのかしら』と心配してるらしいで(笑)。じゃあ授業もちょっとだけやりましょう。ええとねぇ、前回の『蜘蛛(くも)の糸』を思い出して……」

前回の授業では、芥川龍之介の短編を収めた文庫本の中から、松本教諭が『蜘蛛の糸』を朗読したのだ。東大寺の「読書」の授業は、ただ生徒たちが本を読む授業ではない。教員が生徒に「読み聞かせ」を行う授業なのだ。

黒板に、「蜘蛛の糸はなぜ断れたか」と書く。

「ノートにこの解説を書いてください。制限時間5分」

生徒たちがノートに書いている間、松本教諭は教室の机の間を練り歩く。ときどき姿勢やノートの書き方、床の上に散乱する私物を注意する。
「お釈迦様が蜘蛛の糸を垂らしたんだな。お釈迦様が切ったんか? ちゃうよな」

「違うの?」

「あっ、『違うん?』っていう人が中に何人かいてるよな。蜘蛛の糸は自然と切れたんだよな。人間ってな、1匹の生物やからな、自分が大事なのは当たり前なんや。でも何でな、自己チューはあかんのや」

道徳の授業のようになってきた。

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