MRJは航空界のゲームチェンジャーになるか プロジェクトは依然として厳しい状況

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MRJ90の機内。電装関連のテスト機で天井などはむき出しのまま(筆者撮影)

MRJ90は今年1月、配線系統のつくりを見直すなどの理由により、初号機の納機を2年間延期するという大胆な決断を行った。

パリショーの会場で会見に応じたプログラム・ディレクターのアレクサンダー・ベラミーは、「1日も早く、日本の航空当局による型式証明を取得しなければならない。さまざまなテストを行うのに、最も時間短縮ができる簡単な方法はテスト機を増やすことだ」としたうえで、「世界中から航空機生産にかかわる各方面のスペシャリストをかき集めている」と現状についてそう述べた。

欧米メディアは一様に辛口評価

三菱航空機としては、MRJ90のパリショーへの出展を通じ、既存顧客のつなぎ留めを進める一方、さらなる受注増につなげるきっかけにする目的があったことは疑いない。ところが、一部メディアに批判の機会を与えることになってしまった。

現地で筆者が言葉を交わす中で耳にした厳しい辛口の論調をいくつか紹介しよう。

「半世紀ぶりの日本の民間航空機がお目見え。しかし、5回におよぶ納品延期で生産コストの増加は避けられない」「2013年に乗客を乗せて飛ぶはずだったMRJ。でも、初飛行は2015年になってから。そして、メーカーとしての経験不足により大問題が2016年に発覚した」「小さな設計変更が別の問題を引き起こし、機体全体に問題点が滝のように発生している」

パリ航空ショーの会場の1コマ。熱波で連日摂氏35度を超える猛暑だった(筆者撮影)

そして、日本人としては「つらいなあ」と感じるような、こんなコメントもある。

「問題を解決するために、若くてやる気のある専門家を米国、カナダ、欧州から集め、機体のあらゆる部分の再チェックを行っている」「13に分かれるプログラムリーダーは10の異なる国からやって来ており、またエンジニアやマネジャーには40歳以下の若手も多い」

「MRJは日本純国産」というイメージを持つ人が聞いたらがっかりしてしまう事実かもしれない。ちなみに、機体に使われている部品のおよそ半分は米国製、エンジンはプラット&ホイットニー(P&W)社のものが使われることが決まっている。

MRJとは「三菱リージョナルジェット」の略だ。そもそもリージョナルジェット(RJ)とはどんな用途で使われる機体なのか。

一般的な定義では「座席数50~100人、航続距離は2000~3000キロメートル」のジェット機を指す。主に需要が少なめな地方都市間をつなぐフライトに使われることから、「地域の」「地方の」の意味を示す「リージョナル」という語句が当てられている。

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