RJは日本の国内線でも使われている例があるが、主要マーケットは北米と欧州で、世界中を飛ぶRJのうち87%がこの2大市場で飛んでいる。
旅客機市場は目下、ボーイング社とエアバス社の2社寡占のような状況が続いている。その一方でRJについては、カナダを拠点とするボンバルディアと、ブラジルのエンブラエルの2社が市場をほぼ席巻している。
「大は小を兼ねる」とばかり、「RJのような小さい機体をわざわざ造らないで、150~180人乗りの機体で投入すればいいじゃないか?」という考えを持つ人もいるかもしれない。
しかし、小さい機体には「滑走路が短い空港への乗り入れ」や「旅客需要が少ない路線への投入」などそれ相応の使い道がある。
RJが造り続けられる別の理由として、「米国のパイロット労組による圧力がある」という事情もある。パイロットたちは仕事を確保するために、メジャー航空会社に対して「輸送能力の小さい機体」を一定数導入するよう働きかけている。これについて、福原裕悟営業部部長は「米パイロット労組の動きに呼応する形で、92席のMRJ90だけでなく、席数が少ないMRJ70の受注も期待できる」との見方を示した。
LCC各社は興味を示さず
「RJでは機体が小さすぎて採算に合わない」
欧州の大手格安航空会社(LCC)の幹部はそう断言する。パイロットや客室乗務員の割り振りを考えると、70~100人乗りのRJでは運賃が格安化できないからだ。世界の大手LCCでRJを保有しているところはほぼ皆無と言っていい。
では、MRJの需要はどこにあるのか。2017年6月現在、受注数は427機(オプション分を含む)に達している。最初の納入先はANAと決まっているほか、JALも導入を決めているが、数的には米国の航空会社からの受注が全体の80%に及ぶ。
三菱は、受注残(これから納品する機体の数)では、MRJはRJ市場全体の4分の1に達すると強気の説明を行っている。しかし、世界中の業界関係者が集まるイベントとして最大のパリショーの期間中、具体的な受注増につながる案件は結局出てこなかった。冒頭で述べたように「ショー参加の目的は進捗状況を見せるため」だったとはいえ、導入に前向きな考えを示していた航空会社もあっただけに、ショー中に進展が見られなかったのは寂しいかぎりだ。
依然として厳しい状況に置かれているMRJ生産プロジェクトだが、一方で競合各社はMRJに対して一定の警戒感を示している。RJ市場で大きなシェアを占めてきたエンブラエルの幹部はMRJについて「新たな競争相手だ」と明らかに存在を認めるコメントを口にした。航空業界を変化させるゲームチェンジャーになるのだろうか。
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