「ちゃんと議論できない」日本社会への処方箋

堀潤×若新雄純「論破禁止ゼミ」の狙いを聞く

:簡潔に言えば、「もっとみんな自分の意見を素直に発信していこうよ。間違ってもいいからさ」ということです。

若新:「論破禁止」っていうと、優しくて甘いイメージを持たれることもあるんですが、丁寧さと柔軟さを大事にするために、まずは「主語を明確にする」「事実(ファクト)をもとに話をはじめる」というルールをつくっています。

議論の途中に意見を変えてもいい

:あと「議論の途中に意見を変えてもいい」。僕らは断言するよりも、議論を通じて意見を変えていけることのほうが、問題を解決していくうえで正しい姿勢だと信じているので。

――意見を議論の途中で変えることに抵抗感を覚える日本人は少なくないという実感があります。

政策プロデューサーの若新雄純氏(撮影:梅谷 秀司)

若新:そうなんです。一度表明した意見にとらわれすぎです。「民主主義を守る」と主張していた若者の政治団体でさえ、加入当初の意見や考えを変えようとする学生に対して、それを認めないという非民主的な態度を見せていたのが印象的でしたね。

:意見を変えた相手を村八分にしようとするのは、大人の世界でも同じこと。やっぱり日本の議論は、「みんなが納得できる正解を探す」よりも「闘論する」ことに気を取られすぎているんだと思う。

そろそろイデオロギーで殴り合う貧弱な姿勢からは卒業したほうがいい。でないと、日本の未来はとても暗い。

――というと?

:一昨年、映画『犬神家の一族』などに出演されていた俳優の加藤武さんにインタビューする機会がありました。

亡くなるちょうど2カ月前にお会いしたんですが、そのとき僕は「今の政治家たちに安保法制について任せるのは、ちょっと不安ですよね。戦争を知らない世代ですし」と言ったんです。すると加藤さんは「ドンッ!」と机をたたいて、「戦争を知らない世代というのはおかしいね。太平洋戦争が終わったあとに朝鮮戦争があって、ベトナム戦争があって、湾岸戦争があって、イラク戦争があったじゃないか。で、今はイスラム国っていうんだっけ。戦争はいつの時代も起きている。見ていないだけだよ」と喝破されました。

僕は太平洋戦争当時を知る方々にインタビューして記録する「みんなの戦争アーカイブ」という取り組みを続けてきたのですが、「戦争を実感したのはいつですか?」と尋ねると、「昭和20年の・・・・・・」と答える方が多かったのです。政治や社会問題への関心よりも、自分の夢をどうかなえるか、仕事をどううまくやり切るか、そうしたことが最大の関心事だったからだというのです。

「お国が国民を不幸のどん底に陥れるようなことをするはずがない」とうっすら信じてもいたと。職場や学校、家庭では政治の話は唐突すぎて、あえて話題にすることはなかったという声もききました。大本営発表のプロパガンダと批判された当時の新聞報道やラジオ放送もそもそも読んだり、聞いたりする余裕がないほど忙しかった、というのです。社会の問題よりも自分の問題が最優先、そんな感覚は戦前も今も変わらないのではと思っています。もしかしたらまた同じような時代を迎えるかもしれない。それを食い止めるためにも、日頃から事実をもとにちゃんと議論しあえる環境をつくりたいんです。

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