「ちゃんと議論できない」日本社会への処方箋

堀潤×若新雄純「論破禁止ゼミ」の狙いを聞く

若新雄純(以下、若新):それだけで日本の議論の仕方とまったく違いますよね。自分の意見が正しいかどうかを主張し、白黒をつけようとする前に、まずはみんなで丁寧に事実確認をしていくってことですよね?

:ええ。みんな自制しながら、淡々と事実をもとに議論する。しかも何回も話し合う機会を設けるので、そのときはやっと4回目で「こうやって問題を改善していきましょう」という方向性が定まりました。「アメリカは民主主義の国としての底力があるな」と感じましたね。

日本人の討論は「闘論」になっている?

――日本の議論は?

ジャーナリストでキャスターの堀潤氏(撮影:梅谷 秀司)

:原発にしても豊洲の問題にしても、ファクトよりも感情やイデオロギーが先行しがちで、賛成か反対かを白黒つけることに気を取られている。

それって、民主主義としてまっとうですか? 違いますよね。そんな状況を変えたいと思っていたときに、若新さんと意気投合して「論破禁止ゼミ」を開設したわけです。この取り組みは、日本人の議論の仕方を“まっとうなもの”に変えるための挑戦なんですよ。

若新:もちろん、最終的には論破できたらカッコイイんですけど、現代は簡単には決着のつかないテーマが多いですよね。決着や結論を求める前に、まずは「賛否を超えてじっくり話し合い、学び合う」、そういう場づくりをしたいなと。

――日本人の議論は討論ではなく、論争を闘わせる闘論になってしまいがちです。

:それは、日本人には「大きな主語を使って話す癖」があるからです。「原発の賛否」について話し合うときも、主語を「原発は」としてしまうと、「原発の技術の話」なのか、それとも「原発を運営する企業の話」なのか、あいまいになるときがあるじゃないですか。議論するときに、もっと「主語を小さく」、つまりより具体的に落とし込んで語ることをわれわれは意識しないといけない。

若新:例えるなら、おじさんが「若者」について物申すようなときですかね。「いまどきの若いヤツは◯◯だ」とか。そのおじさんが言う若者というものが、いったいどこの誰を指すのかすごく不明瞭です。あなたにとっての若者は、「自分よりも年下の男」なのか「会社の後輩」なのか、「自分の息子」のどれなんだと。若者と一言で言っても、あたり前ですが、いろいろな人がいるわけで、「総称」で論じることはできないと思うんです。

――こういった議論が、日本人の偏見や社会階層の分断を増長させているといえるワケですね。

若新:あと、「声が大きい人が勝つ」というのをよく聞きますよね。根拠がなくても、タイミングよく上手に言い切ってしまえる人が、なんだか正しく見える。

:「朝生(朝まで生テレビ!)」もまさに言い切れる人が勝つ世界観です。

若新:上手に言い切れる人に評価や注目が集まりだすと、一方でそれが苦手な人たちは何も言い出すことができず、意見そのものがないかのように見えてきます。

だからといって、「上手に言い切る」トレーニングが大事だとは思わないんです。それよりも、間違いや恥ずかしさも楽しみながら、自由に質問や発言することができる「学びのプロセス」を僕らは大事にしたい。

:「論破禁止」は、その思いを込めたフレーズなわけです。

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