食べログレビュアーへの疑惑が映す根本課題 もう自助努力や自浄作用をアテにはできない
FTCはガイドラインを定め、注意喚起を行うだけではない。今年5月には、約90人のインフルエンサーに対して、ソーシャルメディア上のネイティブ広告やスポンサードコンテンツについて、注意を促す書簡を送っている。また、これらのインフルエンサーをマーケティング活動に生かしていた企業に対しても「指導」を行っている。
また、特に悪質なケースについては、「指導」ではなく「制裁金」を課すこともある。これが日本にはない部分だ。実際FTCが「悪質な商品レビュー」に対して制裁金を課した事例を見ると、2011年までさかのぼることができる。ちなみに、この事例はギターレッスンのDVDを誇大に広告していた販売会社に対するもので、制裁金の額は25万ドルだったという記録が残っている。
ネット上の情報が強い影響力を持つようになった今
もちろん日本に、こういったガイドラインや注意喚起を行う機関や団体が存在しないわけではない。だが、悪質なケースに対して制裁金を課すほどのことはできないし、インフルエンサーや企業に直接「注意」や「指導」を行うこともないのが現状だ。身も蓋(ふた)もない言い方をすると、拘束力はほぼ皆無である。
今回の「レビュアーに対する過剰接待」疑惑についても、こういった拘束力がないがゆえに、これまで何度となく繰り返されてきた「炎上して、沈静化して、その後忘れられる」という流れをたどることになる可能性は高い。そして、また同じような論調の議論を経て、同じような着地点に落ち着く結果になってしまうだろう。
これまでは、業界内の自助努力や自浄作用で、まだどうにかなっていた部分はあったかもしれない。だが現在、こういった“自分たちのお作法”だけでは、ビジネスがきちんと機能しなくなりつつあるのが現状だ。日本も、FTCに相当するような、拘束力を伴った機関をきちんと設け、秩序を維持していかないと、また同じことを繰り返す結果になってしまいかねない。食べログのレビュアーに限らず、インターネット上の情報が、消費者に対して強い影響力を持つようになった今、今回の一件が教訓として残ることすらないという状況は、そろそろ避けなくてはならない段階に差しかかっているはずだ。
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