アマゾンがリアル小売りへ進撃する真の意図 ホールフーズ買収は一例にすぎない
シアトルはアマゾン以外にもマイクロソフト、フェイスブックなどの大手IT企業が拠点を置いている街だ。全世界的にカフェチェーンを展開するスターバックス発祥の地としても知られている。約70万人の人口に対し、シアトルに勤めるアマゾン社員は約4%に当たる3万人。同社は市内に30もの社屋を構えており、現在も周辺地域で複数の社屋を建設中だ。
本社には、IT企業らしい発想の自由さが見られる。「DAY1」(2016年11月)、「DOPPLER」(2015年12月)など、各社屋につけられたユニークな名前は、すべてアマゾンの理念や成長の歴史と縁の深いフレーズだ。ちなみに「DAY1」は、創業者・ジェフ・ベゾスCEOが掲げる経営理念「(インターネットは)まだ1日目」から取られたもの、「DOPPLER」はAI搭載スピーカー「アマゾン・エコー」の、開発段階における愛称から取られたものである。
一方で本社群を見て回ると、普通のIT企業とは違うアマゾンならではの特徴にも気づく。まず、各社屋の外観に「amazon」という社名やロゴの表示がほとんどないことだ。建物に入り、受け付けに行けばさすがにロゴが目に入るが、それ以外の部分では露出が控えめだ。シアトルという都市とアマゾンという企業が混ざり合い、溶け合っているような印象を受ける。
社員数が増える中で、アマゾンが新しい本社群づくりのテーマに設定したのは「Great neighborhood(よき隣人)」だ。社員以外にも振舞われる無料のバナナスタンドを設置しているほか、飼い犬を遊ばせることができるスペースや、建物1階部分にある休憩スペースを誰でも利用できるようにしている。
よき隣人――。それは膨張を続ける日本市場にとっても当てはまるテーマになりそうだ。2016年度は日本の売上高が108億ドル(約1.2兆円)、社員数は4400人までになったアマゾン ジャパンは、ヤマト運輸との配送料の価格交渉など難しい局面に立たされている。
書籍事業では商品の納期短縮を進めるため、卸(取次)最大手の日本出版販売との取引を一部打ち切るなど、大胆な策にも打って出ている。よき隣人としていかに顧客と共鳴できるか。巨人・アマゾンがこれから向き合わなければならない課題である。
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