資本主義が「中毒症」を生み出すメカニズム 2人の「ノーベル賞」受賞者が鳴らす警鐘
でもそこで、新しい使い道が見つかった。まもなくスロットマシンはギャンブル用機械を含むようになった。
当時の新聞を見ると、この現代的な意味でのスロットマシン登場は1893年だったようだ。こうした初期の機械の中には、勝者への報酬をおカネではなくフルーツキャンデーで支払うものもあった。まもなくだれもが、ある珍しいできごと、つまり3つのサクランボの登場に、特別な意味づけをするようになった。
1890年代が終わる前に、新手の中毒症があらわれた。ギャンブル用スロットマシン中毒だ。
1899年のロサンゼルス・タイムズの報道によれば「ほぼあらゆる酒場にこうした機械が1台から6台ほど置かれていて、朝から晩までそれをプレーヤーたちの群れが取り囲んでいる。(中略)いったんこの習慣が身についてしまうと、ほとんどマニア状態になる。若者が、この機械で何時間もぶっ続けで遊んでいるのが見られる。かれらは最終的にまちがいなく敗者となるだろう」。
イノベーションの裏面
コンピュータ化でスロットマシンには新しいキャリアが開かれた。MIT(マサチューセッツ工科大学)のナターシャ・シュルによる2012年の著書の題名どおり、新しい機械は「中毒するよう設計」されている。シュルがラスベガスのギャンブル中毒者更生集会で出会ったモリーは、この中毒が持つ人間的な側面を実証している。
モリーはシュルに、自分自身をどう見ているかという地図を描いて見せた。そこには、孤独な棒人間のような自分がスロットマシンのそばにいて、丸い道路がそれを取り囲んでいる。その道路は、彼女の人生で最も重要な6カ所を結んでいる。彼女が予約担当者として働くMGMグランド、ギャンブルを行う3カ所、彼女がギャンブル中毒を治そうとしているギャンブル中毒者更生集会の場所、そして最後に、不安障害を抑える薬をもらう場所だ。
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