あの「経産省若手レポート」は炎上覚悟だった

人生100年時代に「全員賛成」の政策はない

経産省・今村啓太氏(以下、今村):今回は、母子家庭や高齢者、教育の問題など、経産省の専門外の分野に対しても問題提起を行いました。特定の官庁や部門で、一部の専門家だけが集まって考える旧来の形ではなく、一人の行政官として、一人の国民として幅広くあらゆる問題を知り、考える。これが、多様化する社会において役所に求められる姿ではないかと思います。

私がプロジェクトメンバーに立候補した背景には、役所としての限界を感じていたことがあります。複雑化、多様化した時代のなかで、自分たちだけで考えて実行することは難しく、広く国民の皆さんからの意見をいただきながらやっていくしかない。

公の再構築という話がありましたが、国内外においてすでに多くの取り組みがなされています。社会問題に対しては、役所だけでなく民間の対処がより一層重要になるだろうと思います。役所だけでは、とてもじゃないけれどすべての国民の方々の多様なニーズにリーチすることは難しい。そういう現実を国民の方々へ問いかけるきっかけになったのではないかと思います。

石井:僕は、現場の人間だから、発表当日この資料を見て「こんなマクロ的な視点で抽象的なことを言われても……」と思いましたが、やがて「あ、そうか」と。自分の担当に、新しい企業を応援する投資家への優遇税制(エンジェル税制)があります。これをもっとうまく活用して、「公」の課題に挑戦する人たちを手助けする資金の流れができるんじゃないか。この資料をきっかけに自分のテリトリーのなかで変えていけるものがある。多くの人がそれに取り組み、少しずつ変えていけば、面白いと考えるようになりました。

「100年人生」で生き方は確実に変わる

『ライフ・シフト』チーム:漠然とした不安についてのお話のなかで「人生100年。定年からあと35年も年金暮らし」という言葉がありましたが、『ライフ・シフト』はまさにそれについて書かれた本です。原書のタイトルは“THE 100-YEAR LIFE”。100年人生で何が起きるのかがテーマです。

日本では、2007年に生まれた子どもの半数が107歳まで生きうると試算されています。20代まで勉強、65歳まで働いて、あとは引退という「3ステージ」は崩れるでしょう。20代までに学んだことがその後80年通用するほど変化がゆるい時代ではないですし、定年後35年もあると、貯蓄だけでは厳しい。そこで今後は、学んで働き、学んで働きを繰り返す「マルチステージ」の生き方に変化するだろうと示されています。

現役世代のうちから複線的に社会参画できれば、というご提案がありましたが、『ライフ・シフト』にも働き方の多様化・多重化が描かれています。旅をしながらその都度身近なところで小商いをする「エクスプローラー」。培った能力で開業する「インディペンデント・プロデューサー」。同時に多様な活動にかかわる「ポートフォリオ・ワーカー」などです。一斉行進の時代は終わる。人生の前提や価値観は覆るのだろうと思います。

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