あの「経産省若手レポート」は炎上覚悟だった

人生100年時代に「全員賛成」の政策はない

足立:まず、個人や社会の問題に着目して、いま課題だと思うこと、感じることを自由に挙げていきました。《いろいろ変わりすぎてついていけない》《おカネよりも安心とつながりがほしい》《人生100年。定年からあと35年も年金暮らし》――世の中の急速な変化とそれに対応しきれていない制度、誰もが漠然とした不満や不安を抱えています。

現在の社会システムは、戦後の高度成長期を前提に作られたものです。「サラリーマンと専業主婦の夫婦、定年後は年金暮らし」という「昭和の人生すごろく」のような標準的なモデルはもはや存在せず、多様化しています。ですが、制度や価値観はそのまま。個人の選択が歪められているかもしれない。だから、「今後は、人生100年、二毛作三毛作が当たり前」という表現で、疑問を投げかけました。

たとえば、定年後の人生。日本は健康寿命世界一といわれますが、定年後は意欲と能力があっても、働く場所がなく、何をしたらいいかわからない、結果、テレビを見て1日過ごしている人がたくさんいます。そして、人生の終末期には自宅で最期を迎えたいと望みながら、延命治療が行われ、大半の人が病院で亡くなっていく。一律に「高齢者=弱者」と区切られ、人生の選択の自由が奪われているかもしれない。これは幸せなのでしょうか。

現役世代には冷たいシステム

高齢者への手厚い年金や医療と対照的に、現役世代には冷たい。日本は、母子世帯の過半数が貧困状態です。これは世界で突出しています。また、若者の半数以上が「自国のために役立つことをしたい」と考えているのに、「自分が政治に参加することで社会が変わる」と感じる人は3割程度。若者が活躍の場を提供されていないことが浮かび上がります。

抜本的に変えるのは難しく感じるかもしれませんが、改革の芽は出ているように思います。私の周辺でも「ずっと官僚だけをやってきて、ほかの仕事はできない」という声を聞きますが、そういった人たちが、定年後ではなく、30代、40代から複線的に社会参画できる制度があれば、個人の役割が多重化されて、長く楽しく活躍できる社会モデルを築けるかもしれません。

少子化であればこそ、子どもへのケアや教育を「社会に対する投資」ととらえ、最優先し、見直していくことも考えられます。そして、すべてを官が担うのではなく、公の課題をみんなで解決し、再構築していく。意欲と能力ある個人が担い手になることで、個人の帰属やつながりを回復し、不確実でも明るい未来が実現できるのではないか。これらが、私たちの議論の末のメッセージです。

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