あの「経産省若手レポート」は炎上覚悟だった 人生100年時代に「全員賛成」の政策はない
石井:役人は何を考えているのかという話ですが、これは、いろんな人がいろんなことを考えている、ということです。ベンチャーや新事業を支援している僕らのチームには、新しいところに投資することで国が豊かになるという信念がある。
でも、旧来の産業や雇用をしっかりと守るべきだという信念を持つ人たちもいる。国の出費は抑えるべき、アンフェアな租税回避の可能性がある制度はつくるべきではないというのもまた正論です。相いれないところがあるんですね。この資料も、若手チームの総意ではなく、いろんな人のいろんな思いが載っているわけです。
これからの政策は必ず「賛否両論」になる
今村:石井さんがおっしゃったように、発表した資料のすべての内容にチーム全員が同意しているわけではありません。また、資料のなかには、炎上する可能性を秘めている項目が満載とも認識しています。でも、賛否両論でない、みんながそろって賛成するような政策は、もうとっくの昔に行われていると思います。これから行われる政策は、必ず賛否両論になる。そのような議論を恐れずに向き合っていく必要があるだろうと考えています。
学生E:私は、老後の生活の必要資金を確保する必要があるので貯蓄を増やそうと思いました。やはり社会保障には頼れないのだなと。人生100年のための資産運用とかも考えないといけないし、そのためのファイナンスの知識も必要。
学生F:今起きている変化への対応の基礎として、子どもへの教育投資が重要だなと思いました。生きる力を養う「アクティブラーニング」では民間企業の役割が大きいし、個々の子どもに合わせた教育を実現する「アダプティブラーニング」では個人の活躍が必要。そして、教育の基本となる情報へのアクセシビリティを高め、質の高い情報の流れを確保するのは官の役目だと思います。それぞれが大事で、自分としても貢献していきたいと思います。
足立:今日は、皆さんが人生100年に関心が高く、まずは自分ごととしてとらえていただいている印象を受けました。衝撃だったのは、兼業・副業や社内起業など、今回の資料で挙げたような考え方が、まだまだ日本の企業の中では、自分たちからは遠い話と思われているということ。考え方自体は浸透してきていると思っていたし、その方向に当たり前に進んでいくものだと思っていました。でも、この資料を社内で配ったり、実際に動いてくださっている方もいて、ものごとが「動く」きっかけにはなってきたかなと思いました。
今村:今回の資料では、自分たちは具体的な解決策を示していませんし、とりあえず問いかけてみるという、これまでの行政手法からすると無責任なところがあります。そこには、良い面も悪い面もある。ですから、皆さまからも、ある意味、無責任にいろんなご意見を発信していただけたら、たくさんの意義のある議論が行われていくのだろうと思っています。
石井:いろんな事象や要因が絡み合っている中で、社会課題を抜本的に解決する決め手はない時代。でも、いろんな人がいろんなところで行動を起こし、流れをつくっていくことはできる。そういう意味で、この資料が議論を呼んだことはよかったと思います。できるだけ多くの方がこの資料の問いかけを、個人としての行動や、ビジネスの方向性を考えるきっかけにしていただければと思います。
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