労働時間の削減で賃金が減っては意味がない 「働き方改革」の落とし穴に要注意

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追加就業を望むパートタイム労働者の労働時間を増やすことは、深刻化する人手不足の緩和に一定の役割を果たすことも期待できる。企業の人手不足感がバブル期並みの水準にまで高まっている一因は、雇用者数が順調に伸びている一方で、労働時間が大幅に減少しているためだ。雇用者数に1人当たりの労働時間を掛け合わせた労働投入量はあまり増えていないのである。雇用者数の伸びは1990年以降の景気回復局面で最も高いが、1人当たり労働時間が大幅に減少しているため、労働投入量の増加ペースは1990年以降で2番目に低い。

労働時間の減少に歯止めをかけることができれば、労働投入量の増加を通じて人手不足の緩和につながるとともに、労働需給の引き締まりを反映したパートタイム労働者の時給の上昇が労働者全体の平均賃金の上昇につながりやすくなるだろう。

労働時間の変動が賃金総額に大きく影響

「働き方改革」における長時間労働の是正を考えるうえでは、労働者の賃金が労働時間に連動して決まる部分とそうでない部分に分かれていることを踏まえておく必要がある。

パートタイム労働者の現金給与総額、一般労働者の所定外給与を労働時間連動型給与として、労働者の賃金総額(1人当たり現金給与総額×常用労働者数)に占める割合を計算すると、労働時間連動型給与の割合は1990年代前半には10%に満たなかったが、足元では15%程度まで高まっている。

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