労働時間の削減で賃金が減っては意味がない

「働き方改革」の落とし穴に要注意

ただし、労働時間を就業形態別にみると、正社員を中心とする一般労働者の総労働時間は「毎月勤労統計調査」で就業形態別の労働時間の調査が開始された1993年以降、2000時間前後でほぼ一定となっている。

1人当たりの労働時間が減少を続けているのは、労働者全体に占めるパートタイム労働者などの短時間労働者の割合が高まっていることに加え、パートタイム労働者の労働時間が減少しているためである。直近10年間でパートタイム労働者比率は5%ポイント程度上昇、パートタイム労働者の総労働時間は10%近く減少している。

パートタイム労働者の賃金総額も減少

パートタイム労働者の所定内給与の伸びは低迷しており、これを時間当たり賃金と労働時間に要因分解すると、時間当たり賃金の伸びが高まる一方で、労働時間の減少幅が拡大している。2016年度に入ってからは前年比で2%前後労働時間の減少が続き、賃金の増加を打ち消して、所定内給与は前年比マイナス0.4%と7年ぶりの減少となった。パートタイム労働者は、残業代やボーナスが少ないため、現金給与総額で見ても前年比マイナス0.4%となった。

パートタイム労働者は賃金水準が相対的に低いため、その割合が高まると労働者全体の平均賃金は押し下げられてしまう。しかし、企業の人手不足感がバブル期並みに高まる中、ここにきて企業が正社員の採用を増やしているため、雇用の非正規化には歯止めがかかりつつある。

総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)」によれば、雇用者(役員を除く)に占める非正規雇用(パート・アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託、その他)の割合は1980年代半ばの15%程度から上昇を続け、2000年代前半には30%を超えた。その後はペースを落としながらも30%台後半まで上昇したが、2015、2016年度は37.4~37.5%でほぼ横ばいとなっている。

「毎月勤労統計調査」におけるパートタイム労働者比率の上昇も頭打ちとなっている。この結果、パートタイム比率の上昇による平均賃金の押し下げ圧力は小さくなっている。パート比率上昇による平均賃金の押し下げ幅は、2013年度の前年比マイナス0.7%から2014年度に同マイナス0.5%、2015年度に同マイナス0.2%へと縮小した後、2016 年度は同マイナス0.0%とゼロに近くなった。

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