労働時間の削減で賃金が減っては意味がない

「働き方改革」の落とし穴に要注意

しかし、時間当たり賃金の上昇が労働時間の減少に打ち消され、パートタイム労働者の賃金総額自体が減ってしまっている。結果的に、労働需給の引き締まりを反映したパートタイム労働者の時給の上昇は労働者全体の平均賃金押し上げにまったく寄与していない。

なぜパートタイムの労働時間は減少しているのか

このところパートタイム労働者の労働時間の減少ペースが加速している。この理由としては、(1)相対的に労働時間の短い高齢者層の増加、(2)パートタイム労働者の中でも特に労働時間が短い飲食サービス業、教育・学習支援業などの労働者の増加、(3)労働時間、収入を増やすことで「配偶者控除」が受けられなくなる(いわゆる103万円の壁)などといった税・社会保障制度上の問題、などが考えられる。

パートタイム労働者の労働時間減少要因のうち、(1)については、男女ともに60歳以上になると非正規雇用比率が高まるが、特に男性は60歳未満の10%台から60 歳以上で50%以上へと急上昇する。高齢化の進展とともに非正規雇用に占める高齢者(60歳以上)の割合も2000年代前半の15%程度から足元では25%強まで上昇している。特に、団塊の世代が60歳を迎えた2007年以降は、嘱託などの非正規雇用の形で60歳以降も働く人が増えたため、上昇ペースが加速している。高齢者の比率が高まることはパートタイム労働者の労働時間の減少につながる。

また、いわゆる「103万円の壁」については、配偶者の所得の大きさに応じて控除を段階的に減少させる配偶者特別控除の導入により、配偶者の収入が103万円を超えても世帯の手取りが逆転しない仕組みとなった。つまり、税制上の103万円の壁は解消している。しかし、「103万円」を配偶者手当の支給基準としている企業が少なくないこともあり、心理的な壁として根強く残っている。

2016年10月から、週30時間以上働く人に加え、従業員501人以上の会社で週20間以上働く人にも厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象が広がった。この新たな保険料を支払うことを回避するために、就業時間を抑制するパートタイム労働者が一定程度存在している可能性もあるだろう。

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