労働時間の削減で賃金が減っては意味がない

「働き方改革」の落とし穴に要注意

時間当たり賃金はパートタイム労働者を中心とした非正規労働者の賃金上昇圧力を見るうえでは適切な指標だが、労働市場全体の賃金動向を判断するうえでは時間当たり賃金に労働時間を掛け合わせた賃金総額の動きを合わせてみる必要がある。

時給の増加を賃金総額の増加につなげるためには、労働時間の減少に歯止めをかけることも必要だ。「働き方改革」で長時間労働の是正が大きな課題となる中で、労働時間を延ばすことは時代に逆行する動きと思われるかもしれない。しかし、長時間労働で問題となっているのは、一部の産業、企業でフルタイム労働者を中心に健康を害するような残業が行われていること、残業代が支払われないサービス残業が横行していることなどだ。働き方改革実現会議が2017年3月にまとめた「働き方改革実行計画」においても、長時間労働で問題とされているのは、フルタイム労働者である。

就業時間の増加を希望する非正規労働者も

高齢化に伴う労働時間減少に歯止めをかけることは難しいが、パートタイム労働者などの非正規労働者の中には就業時間の増加を希望する者も少なくない。総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)」によれば、就業時間の増加を希望する者は、正規労働者では全体の3%にすぎず、就業時間の減少希望者の17%を大きく下回っているが、非正規労働者では増加希望者が13%と減少希望者の7%を上回っている(いずれも2016年の数値)。

2017年度税制改正では、所得控除額38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限が150万円まで引き上げられることが決まった。これによりパートタイム労働者の労働時間が一定程度増える可能性もあるが、社会保険の「130万円の壁」など就業調整の誘因となる制度的な壁は依然として残っている。共働き世帯の増加や、女性・高齢者の労働参加拡大といった社会的背景を踏まえて、働き方に中立的な制度改革をさらに進めていくことが求められる。

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