東京五輪の聖火台を目指し「空飛ぶ車」開発へ トヨタの若手など約30人が中心メンバー
[豊田市 3日 ロイター] - 2020年開催の東京五輪・パラリンピックの聖火台に「空飛ぶ車」で火を灯したい――。そんな若手技術者らの夢をトヨタ自動車<7203.T>グループ15社が支援する。
技術者自ら「奇跡がなければ実現できない」と語るほどの難しいプロジェクトだが、各社は先月、総額4250万円の資金支援を決めた。まずは18年末までに有人飛行ができる試作機の完成をめざす。
開発を進めているのは、トヨタの若手技術者など約30人が中心メンバーになっている有志団体「CARTIVATOR(カーティベータ―)」。代表を務める中村翼氏(32)の計画が12年9月に社外のビジネスコンテストで優勝したことをきっかけに発足、14年1月に開発に着手した。平均年齢およそ30歳というコアメンバーは勤務時間外の寸暇を惜しんで、開発に取り組んでいる。
「あと3年で本当に飛ばすとなると、かなりの奇跡を起こさないといけない」。中村代表は3日、豊田市でのロイターとのインタビューで、プロジェクトの厳しさをこう表現した。同氏によると、開発の現状は「自動車が浮上する最初の第一歩が見えてきた段階。ステップとしてはまだ10あるうちの1、2くらい」。メディアに同日公開した現在の試作機は、まだ安定浮上すらできず、わずか数秒で地面に落ちる。浮上時は騒音も大きく、課題は山積みだ。
しかし、「空飛ぶ車」は決して夢物語ではない。五輪での飛行を実現するための開発資金はまだ「数十億円必要」(中村氏)という壮大な計画だが、新興企業や航空機メーカーなどは飛行機能を持つ車を次世代モビリティの新たな候補として注目しており、相次いで開発への参入を表明している。
ライドシェア(相乗り)大手の米ウーバー・テクノロジーズ[UBER.UL]は4月には空飛ぶタクシーサービスの開発計画を発表、20年までの試験飛行をめざしている。欧州航空機大手エアバス・グループ<AIR.PA>も1月、「空飛ぶ自動運転車」の試験機のテストを年内に行う計画を明らかにした。
今回のトヨタグループによる資金支援は夢を追う若手技術者らの意欲を支援することが主な目的。中村氏は、都市部や狭い場所でも離着陸や駐車ができるよう、「世界最小」を売りにした空飛ぶ電気自動車(EV)として 「25年には販売し、50年には誰もが全世界で飛べる時代を創りたい」と意欲を見せている。
(白木真紀、Ha Kwiyeon)
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