たとえば夫が新婚早々、ほかの女性と食事した事実を新妻に秘密にし、それがバレたとします。夫は報告する必要もないほどの仲だったからと言い、妻はやましい心があったから秘密にしたのだと夫を責めます。結果は妻が今後一生、この問題を抱えて暮らすのは耐えられないと、離婚に至りました。はたして、どんな種類の愛情だったのでしょうか。
逆に、たとえば何年間も愛人宅で暮らした夫を(なかには「これは浮気ではなく本気だ」と、離縁を土下座して迫ったり、奈落の底にいる妻が「自殺する!」と叫ぶと、「引きとめないから」と吐き捨てるように言ったりしたひどい人もいます)、あの手この手で連れ戻し、元の円満夫婦に収まった例も、私は何組も知っています。
若い頃の私は無理に体だけ連れ戻しても、心まで戻るわけはなく、かえってお互いに傷を抱いて暮らすだけだと思っていました。ところが実際は、夫婦の危機を共に乗り越えて、さらに絆を深めている夫婦が多いのです。
夫もいろいろ、妻もいろいろ、浮気の受け止め方も着地点もいろいろです。
夫婦の危機脱出も、考え方次第
夫の浮気が離婚と結び付かなかった夫婦には、ある共通点があります。それまでに積み上げてきた夫婦の歴史や性格等が異なり、あくまでおよその共通項ですが、まず基本的に「その事件」以前は夫が妻に誠実だったことです。妻は夫の良さを熟知しています。そして妻が、針の穴から世界を見るような狭量な心の持ち主ではないことです。
妻の心が狭量でないと言っても、受けるショックの大きさや悩みの深刻度は同じです。その後の考え方や立ち上がり方が違うのです。羊子様の場合でしたら、次のようになります。
彼は、人生のパートナーなら当然の行為である夫の看護等をしたあなたに、「命の恩人」と感謝できる人です。あなたの発病に、「(泣きに泣いて)全力で支える」と誓った人です。あなたに対して誠実な愛情を持っておられます。
そして相手の女性は、わざわざ日記を書いて(うそ・誇張も大いにありえます)、あなたの目に確実に入るよう、出張中の洗濯物に忍ばせるような女性です。真に妻帯者を愛した者なら、そんなことはしません。夫君を巧妙に誘惑したものの(夫君の言い訳にはなりませんが)、あなたから引き下がるように、夫婦関係をもめさせるしか手がないほどの人間なのです。
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