アマゾンは、メディアで稼げるか? ベゾスの「メディア改造計画」を予測する

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4)キンドルとの連携

最後に、キンドルとの連携もカギになる。キンドルは一定の成功を収めているが、iPadやサムスンのギャラクシーに比べると存在感が薄い。2013年1〜3月のタブレット市場におけるアマゾンのシェアは3.7%。アップルの39.6%、サムスンの17.9%とは大きな開きがある(米調査会社IDC調べ)。キンドルには、書籍専用端末として生きる道もあるが、急成長するタブレット市場を狙わない手はない。

そのために大事なのが、「読書」以外の用途だ。そのひとつとして、「ニュース」は最適といえる。本を買うのは週に一度のユーザーでも、ニュースは毎日読むからだ。

たとえば、キンドルのトップ画面に、自分にパーソナライズされた有料ニュースが表示されるようになれば、一気にユーザー層が広がるはずだ。さらに、eメールやネットサーフィンも快適にできれば、他のタブレットと十分渡り合えるだろう。「アマゾンがスマホを開発中」との噂も根強いが、将来スマホの販売を伸ばすためにも、ニュースはウリになるはずだ。

ほかに、キンドルの普及を進めるため、「ワシントン・ポストの年間購読者や、有料ニュースの年間契約者には、キンドルを無料で配る」といったキャンペーンも考えられる。

東部カルチャーとの相性

以上、4つの連携策を考えてみたが、現代屈指のイノベーターであるベゾスの思考は、外野からは伺い知れない。ただ、本人も明言するように、短期的な利益をむやみに追い求めることはないだろうし、ジャーナリズムの公共性にも配慮するだろう。

そもそもベゾスは、他のネット企業と比べて、“活字”との距離が近い。妻のマッキンジーは小説家であり、ベゾスも大の本好きで知られている。しかも夫婦が卒業したのは、教養主義が色濃い東部の名門プリンストン大学だ。理系色の濃いシリコンバレーのスタンフォード大学とはカルチャーが違う。メディア企業の多くが東部に集結していることを考えると、ベゾスのバックグラウンドはプラスに働くだろう。

今回の買収劇によって、メディア業界が救われるかどうかはまだわからない。ただし、ベゾスの参入によって、ひとつの希望、楽しみが増えたことだけは間違いない。

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