台湾がアジア初の「同性婚合法化」に動く理由 司法の最高機関が「禁止は違憲」と判断
台湾発のニュースが5月24日、世界を駆け巡った。いつもの政治ニュースではなく、台湾司法の最高機関である大法官会議が、同性同士の婚姻を制限してきた現行民法の規定は憲法違反である、との解釈を示したのである。『CNN』『BBC』『ロイター』など世界的な報道機関が速報し、「台湾でアジア初の同性婚合法化へ」と伝えた。
台湾では、LGBT(性的マイノリティ)の権利向上運動が活発で、同性婚を認める民法改正案が立法院(国会)に昨年提出されていた。だが野党の国民党は消極的で、与党の民進党内ですら意見の不一致があり、法改正の動きは止まっていた。しかし、この大法官解釈によって、台湾社会における同性婚の問題はほぼ決着した、と言えるだろう。
今後は、民法改正などの立法作業を、国会にあたる立法院が行うのか、内閣にあたる行政院が行うのかの交通整理が必要になるものの、大法官解釈のなかで指示された「2年以内の立法化」作業がいよいよスタートすることになる。
今回の判断を国際的にアピールしたい理由
この大法官解釈の発表にあたって、蔡英文総統ら政権幹部はその内容をあらかじめ知っていた可能性が高い。
と言うのも、大法官解釈の発表は24日午後4時だが、その前日には司法部の記者会見がセットされ、手際よく英語訳までつけられていたのだ。「国際社会に向かって、台湾の新しい変化をアピールしたいという総統府の意向があったのではないか」と台湾メディアの記者は話す。三権分立に関わる問題はとりあえず置いておいて、それは十分に考えられることだ。
もともと蔡英文総統は、同性婚の合法化支持者として知られている。総統になる前の2015年には、フェイスブックで「愛の前ではみんな平等です。私は蔡英文。結婚の平等(同性婚)を支持します。1人ひとりが自由に愛し、幸福になってほしい」と述べていた。
違憲解釈の発表後すぐに、蔡英文総統は「みなさんが同性婚に対してどんな立場であれ、いまこのとき、私たちは身の回りのあらゆる人を自分の兄弟や姉妹のようにみなすべきです」という、総統としてはいささか感傷的で抽象的なコメントを出しているが、これはどう見ても、ある程度事前に準備していなければ練り上げられない言葉である。