台湾がアジア初の「同性婚合法化」に動く理由

司法の最高機関が「禁止は違憲」と判断

台湾の報道によれば、各国においては、英国や米国、フランス、カナダ、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、デンマーク、ルクセンブルク、アイルランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、南アフリカ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、コロンビアなど23カ国が同性婚を認めており、同性パートナー制を認めているのは、ドイツ、スイス、イタリア、オーストリアなど18カ国。

多くは、同性パートナー制を先に行い、数年から10年以上の時間をへて、同性婚の承認に切り替えている。そしてアジアでは、まだ同性婚を認めた国はない。

この同性婚問題は、台湾でも世論がまとまっているわけではない。10代、20代の若者は圧倒的に同性婚の支持に回っており、連日、街頭デモを繰り返してきた人々は、馬英九前政権に決定的なダメージを与えた2014年のひまわり学生運動の参加者たちと重なっている部分も大きい。これに対して、キリスト教団体は強く反発しているし、実感として年齢層が50歳以上の人々に賛成派はあまり多くないように感じる。台湾で「挺同(同性婚支持派)」と「反同(同性婚反対派)」という二分法の用語が生まれるほど、意見の隔たりは大きかったのだ。

だが社会的な影響力を持つオピニオンリーダーやタレントが、ほぼ総じて同性婚に前向きな姿勢をとっていることの影響は大きかった。メディアもこのあたりを意識しているのか、普段は蔡英文政権のすることならなんでも批判する国民党寄りの『聯合報』『中国時報』でも、大法官解釈については基本はフラットに報じていた。世論調査では拮抗していても、明らかに賛成派の勢いが反対派のそれを大きく勝っていることへの心理的配慮かもしれない。

「迷ったら改革」という台湾の伝統

この台湾の熱気を日本人が理解するのはなかなか難しい。筆者も、台湾の若者たちが混じった食事の席などでこの問題を議論する機会が何度かあったが、「これだけ意見が割れていて、個人の価値観にかかわる話なのだから、何年かじっくり議論してもいいんじゃないか」という大人目線の意見を吐いたりすると、「女性蔑視の国会議員がいて、受動喫煙被害者の権利を守れない日本人に言われたくない」と痛いところをつかれ、厳しく反論されたりした。

もともと台湾社会においては、1980年代から始まった女性の権利向上運動などもあり、女性の意識は非常に高かった。同性の恋愛にも寛容で、台北の繁華街では、一目見て同性カップルとわかる若者が堂々と手をつないで歩いている姿をよく見かける。毎年春に行われるLGBTパレードはアジア最大の賑わいを見せており、明らかに台湾は日本よりも同性婚へのハードルが低くなっている。

加えて、台湾社会が同性婚の合法化に比較的スムーズに向かうことになったのは、台湾における独特の問題として、「改革の優位性」という体質が影響しているのではないだろうか。日本は、賛否両論五分五分のときはあえて前に進ませない社会であるように思うが、台湾では、五分五分ならば民衆は改革を選ぶ傾向があるように感じる。それは「迷ったら改革」というような、民主化の成功体験による台湾の伝統とも言える。

そんな台湾社会の進歩主義的な精神構造と共同意識が、今回の同性婚禁止違憲判断を裏側で広く支えた一因だったのではないだろうか。

(文:野嶋 剛/ジャーナリスト)

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