「略奪婚」のすべてが絶対的な悪とは限らない

「スナック店員と20歳差の再婚」という選択

いま住んでいる福岡には康夫さんの実家もある。父親は他界しているが、81歳の母親は健在だ。康夫さんの再婚を大いに喜び、孫のような年齢の邦子さんをかわいがってくれている。

「毎日、お昼前になると電話がかかってきます。『おかずがあるから取りに来い』みたいな内容です。主人が出張でいない夜は『2人で飲みに行こう』なんて誘ってくれるんですよ。すごく元気な81歳です」

「あんなに幸せそうな息子は何十年ぶり」

そんな義母が邦子さんに明かした。おどけたり笑ったりする康夫さんを見たのは何十年ぶりだ。自分が死ぬまでにあんなに幸せそうな息子を見られるとは思っていなかった、と。

酒場でやたらに明るい客は、職場や家庭では苦しい思いをしていたりするものだ。かつての康夫さんもその1人だった。唯一、甘えられる存在である母親の前ではむっつりと押し黙り、その苦しみをさらけ出していたのだと思う。

いま、康夫さんは笑いと安心に包まれた家庭を持つことができた。健やかな姿を見せることが何よりの親孝行だと筆者は思う。

邦子さんには心配事もある。平均寿命を考えれば、あと10年ぐらいのうちに義母を見送り、その後は康夫さんと両親の介護が同時にやってきかねない。康夫さんの子どもたちや自分の兄弟はあてにならない。1人で3人の面倒をみることができるだろうか。年の差婚にして晩婚である邦子さんならではの悩みである。

不妊、介護、死別の予感。われわれ晩婚さんは結婚と同時に課題に直面することが多い。しかし、そんなときこそ夫婦の力を発揮できると思う。たくさんコミュニケーションをして、知恵を出し合い、助け合いながら乗り越えていくのだ。そのプロセスにも結婚の喜びはあると思いたい。

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