「略奪婚」のすべてが絶対的な悪とは限らない

「スナック店員と20歳差の再婚」という選択

「私は35歳の夏から大阪のスナックで働いていました。ボトルを入れて6000円ぐらい、セット料金でも4000円ぐらいの安いお店です。単身赴任でスナック近くのマンションで一人暮らしをしていた彼は、いわゆる太い客でした。ほぼ毎日飲みに来てくれて、週末には仕事仲間や友達をたくさん引き連れて来てくれます。毎週何万円も使ってくれたんじゃないかな」

「私とは神社仏閣好きという共通の趣味で意気投合しましたが、お互いに恋愛感情はありませんでした。お話の面白い太いお客さん、という印象しかありません」

当時、康夫さんには妻子がいた。といっても、3人の子どもはとっくに成人している。全国各地を転勤しなければならない康夫さんは20年以上も単身赴任生活を続けており、妻にはなんと「彼氏」がいた。

「10年以上前からの関係だとわかっているのだそうです。でも、『私はもうアナタの嫁ではないけれど、子どもたちの母親だから離婚には応じない』と言い張られて、彼は納得していました。バカですよね……。毎月20万円以上も仕送りしていました」

かなり不幸な話ではあるが、ホステスと常連客の会話としてはありがちである。ただし、康夫さんの住む一人暮らしの部屋では、スナックのスタッフと常連客が集まって飲み直したりもしていた。邦子さんにとって康夫さんは良い客であり、気の置けない友達でもあったのだ。

康夫さんからの「不思議な告白」

季節が秋に変わり、康夫さんが九州へ転勤することが決まった。旅芸人のような生活である。引っ越しの片付けはみんなで手伝っていた。そんなある日、康夫さんから連絡が入る。

「読ませたい本があるから取りに来てくれ」

初めて1人で入る康夫さんの部屋。しかし、康夫さんは強引なことをする男性ではない。冗談めかして「記念に持っておきたいので、お前の髪の毛を少しくれ」と意味不明なお願いを邦子さんにしただけだった。

「いま思うと、あれが彼の告白だったんですね。万が一にも奥さんに見つかったら大変なので、もちろん断りました」

断ったものの、邦子さんも康夫さんへの恋心に気づいてしまった。数カ月かけて少しずつ高まっていた気持ちが、離れ離れになる直前で爆発したのかもしれない。

「私はそんなにほれっぽい性格ではないのですが、あのときばかりはキューピッドに射貫かれてしまいました。私はこの人が好きなんだ、と感じた理由は今でもわかりません」

次ページ康夫さんの「決断」
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