マキちゃんはサイトに集まった応援コメントを、一つひとつ泣きながら読んでいた。ふだんはニコニコ明るいキャラなのだが、裏ではすごく苦労していたのだ。
アイデンティティを発信しよう
ラジオのパーソナリティなどしていたマキちゃんは、「福島の今を知ってもらいたい」という思いから、地元の女子たちが旅行者をアテンドして、福島の現在と未来について考えてもらう旅ガイドの事業を考えて、内閣府に助成金を申請して会社を作った。
それが「女子の暮らしの研究所」だ。研究員は、地元や東京で働く社会人や大学生、福島から避難している人など若い女子たち。
みんなで考えた第1弾のプランは、ふくしまの女の子たちの想いを込めた「ふくいろピアス」の作成・販売だ。
伝統工芸品「会津木綿」を、今どきの女子流に可愛くリメイクした鮮やかなピアスで、色ごとに元気をくれる太陽、つながる空、やさしい海といったストーリーが用意されている。
こうしたポップな商品と共に、ふくしまやそこに住む女の子の現状に関心をもってもらうという構想だ。それには理由がある。
震災後、被災地は混乱していた。事故を起こした原発からの距離や地域により、莫大な補償金を得た人がいる一方、わずかな補償金と家賃補助しか得られない人がいるなど、思いがけない差が生まれた。
健康問題についても、子供を持つお母さんやお年寄りを避難させる制度はできても、これから妊娠・出産を迎えるはずの若い女の子たちに手を差し伸べる制度は皆無だった。
彼女たちの多くは周りに相談してもずばっと解決してくれる人がいるわけもなく、不安を抱えながらとどまったり、意を決して自主避難をしたりと、精神的につらい日々を過ごしていた。
そんなとき、同じ境遇のふくしま在住・出身者である若い女の子たちが立ち上がった。peach heartという任意団体を作り、放射能問題について正しい知識と理解を深めるため“ガールズトーク”できる場を設けたり、原爆投下後の暮らしを広島のおばあちゃんに聞きに行ったりしていた。マキちゃんもそのうちのメンバーのひとりだ。
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