一流の社長は「泣いている社員」を放置しない 取引先の理不尽な要求にどう応じるべきか?

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いずれにしても、社長たる者、社員が100%正しいことをやって社外から非難、叱責、罵声を浴びせられれば、敢然として社員を擁護するべきです。社員へのいわれなき罵倒は会社全体に対する罵倒と考えるべきです。そのためには、相手が首相秘書官であろうと政治家であろうと大企業の経営者であろうと松下幸之助さんであろうと、しっかりと抗議するべきなのです。「喧嘩(けんか)」することが大事。それによって、社員は救われた思いになるでしょう。

「社長は社員のトラブル処理係」とは松下さんの言葉ですが、まさにそのとおり。社員が100%正しいのに、社長がそのトラブルを引き受けないということであれば、一社員のやる気どころか社員全員の士気に悪影響を与え、会社の発展は覚束ないでしょう。

ただし、こちらに1%でも非があれば抗議してはいけません。4月に発生したユナイテッド航空の事件(オーバーブッキングで地元警察が顧客を引きずり下ろしたトラブルで)は、当初、CEOは社員を守ろうとして警察や顧客のせいにしていました。これはとんでもないことで傷口を広げることになりました。

こちらに非がある場合には、自己を正当化しないこと、そして「喧嘩」しないことが重要です。当たり前のことです。1%でも非があれば、相手はその1%を突いてくることでしょう。それに対し、「あなたのほうは99%の非がある」と言い返したところで、それは「言い争い」になるだけ。そのときは、言い訳は無用です。99%の説明は時間の無駄です。早々に、社長自ら、相手にお詫びに出掛ける、手紙を出す、電話をかける。それがいちばん解決も早いし、社員の教育にもなるのです。

松下さんにも3回ほど抗議をした

松下さんに本当に抗議したのか、喧嘩をしたのか、と思われるかもしれませんが、私の記憶で確かな抗議は3回です。おぼろげながらの記憶では3回ありますが、おぼろげですからここでは確かな記憶がある抗議の1つを付け加えておきます。

PHP研究所が次第に拡大発展しはじめた頃、松下さんが私に次のように抗議をしてきたことがありました。

「キミんところの社員が、わしの名前を使って営業しておるようやけど、そんなことをしとるんか」

極めて厳しい口調でした。

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