「はっきり内容を覚えている夢」の持つ役割 しっかり眠れているかどうかがわかる

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スタンフォード睡眠研究所を設立したデメント教授による、この「ノンレム睡眠中にも夢を見ている」という報告は、「夢見る」レム睡眠の発見と同様に当時の睡眠研究に衝撃を与えました。

この結果から、「私たちは眠っているかぎりつねに夢の世界にいる」ことがわかったのです。

「あれ、今朝の夢はなんだったっけ?」「今日は夢、見なかったな~」という感覚を覚えることもあるかもしれませんが、寝ているかぎり夢を見ない日はありません。

もっといえば、寝ている間、ずっと夢は脳内で上映されているのです。最近の研究では、レム睡眠、ノンレム睡眠にかかわらず、夢を見ているときは視覚に関係する脳の部位が活性化することもわかっています。

「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」で見る夢が違う

夢の内容を記述してもらうと、レム睡眠中は「実体験に近い夢」「ストーリーのある夢」、ノンレム睡眠中は「抽象的で辻褄が合わない夢」を見ていることが多いと判明しました。

「体は寝ているけれど、脳は起きている」というレム睡眠中は、覚醒時のように大脳皮質が活性化していて、夢の中での自分の動きに呼応するように大脳の運動野で手足の運動をつかさどる神経細胞が活性化します。

つまり、脳の中では「視覚や体の動きを感知して、さも現実かのように夢の世界を体感している」ので、具体的で合理的・現実的な夢を見ることが多いのです。

そうやって定期的に大脳を活性化させておくことで、「明け方のレム睡眠」で自然と目覚めたときに寝ぼけを回避する確率が高まります。つまり、レム睡眠時に見る合理的な夢には、「起きるための準備」という役割もあると思われるのです。

ちなみに、夢を見るのは「人間だけの特権」ではありません。動物も確かに夢を見ることがわかっています。

私の専門は「ナルコレプシー」という突然眠りに落ちてしまう過眠症の研究で、ナルコレプシー研究のため、スタンフォードでは家族性の(遺伝原因の)「ナルコレプシー犬」を何匹も飼育していました(ちなみに、彼らは興奮すると脱力して眠る性質があり、餌をあげて喜ばせると突然眠ってしまいます)。

研究のため、何日も犬の脳波を記録していると、突然眠っている犬が、楽しそうに尻尾を何度も振るときがあります。このとき、まさに「脳は起きている」レム睡眠の真っ最中であり、犬は夢のなかでもきっと尻尾を振りたくなるような楽しい場面だったのでしょう。

これらの観察から、犬もレム睡眠中はヒトと同じようにストーリーのある鮮明な夢を見ているのだと確信しました。

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