「口ぐせが現実を変える」が科学的に正しい訳 「記憶をマネジメントする」ための2つのコツ

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この「プライミング効果」に並び、自分の「記憶」に影響を与えるのに有効なのが「メタ記憶能力」を高めることです。

「メタ記憶」とは、自分で自分の思考や感情の動き、行動パターンを見つめる「メタ認知能力」の中の重要な一部です。まずはこの「メタ認知」から説明しましょう。

たとえば、「よくないとわかっているのに、つい飲んだ帰りにラーメンを食べてしまう」とき、行動や思考の流れ、感情の揺れはどのようなものでしょうか。

“電車を降りた瞬間に駅前のラーメン屋が脳裏に思い浮かび、同時に口の中にこってりとした豚骨スープの味がよみがえる。「太るからやめたほうがいいよ」という妻の声が頭に浮かび、ハッと我に返る。しかし、何歩か自宅のほうに歩き始めたところ、今度はスープがからみついた麺の歯ごたえと喉ごしの記憶がよみがえり、ますます食べたくなる。「やめておけ」という心の声が聞こえるが、まわれ右をしてラーメン屋のほうに歩きながら財布を取り出し、所持金を確認する。「大丈夫、大丈夫」という心の声が聞こえる。ラーメン屋の看板が目に入る。拳を握り「よし食べるぞ!」と決意する。そして……。”

このように、自分の行動を第三者的に実況中継をするような感じで観察することを「メタ認知」といい、その能力を「メタ認知能力」といいます。この能力を高めることによって、自分の強みや弱みなどの特性を知り、自分の思考や行動を軌道修正していくことができるのです。

最初のうちは感情に巻き込まれたりして、なかなか冷静にきめ細かく観察できないかもしれませんが、徐々に自分の行動や思考、感情の微細な動きを観察できるようになります。さらに、そこに過去の記憶がかかわっていることなどもわかってきます。

この「メタ認知」の中でも重要となる要素が、「メタ記憶」です。簡単にいえば、「この記憶を持っていて、この記憶を持っていない」と自分で認識し把握すること。自分の記憶のどこを補えばいいのかを把握するこの「メタ記憶能力」は、受験や資格試験などの勉強シーンでは非常に役立つ能力です。

この「メタ記憶」を活用することで、自分を動かしているプログラムを変更することができるのです。

自分の足りない「記憶」を補う

たとえば、「行動力がある人になりたい」と願うのであれば、「行動力がある」と感じる人をよく観察し、分析してみましょう。本人に質問してみてもいいかもしれません。すると、たとえば「大きな課題をいくつかの要素に分ける」「できるところから手をつける」という行動習慣がある、といった行動習慣の違いがわかるでしょう。

これをさらに“記憶”という観点で分析してみると、「大変な課題をいくつかに分けて取り組むことで、乗り越えることができた」という“成功体験の記憶”や、「とりあえずできるところからやってみよう」という口ぐせ、つまり“体に埋め込まれた記憶”がある、などに気がつくでしょう。

この、分析した“記憶”を参考にし、自分の中になければ補うことで、自分を「行動力がある人」に近づけることができるのです。

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