成功する人とは「偶然を味方にできる人」だ 偶然を味方にする具体的な手段は存在する

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努力をしても必ずしも成功できるわけではない(写真:mantinov / PIXTA)

本書『成功する人は偶然を味方にする』はコーネル大学の人気教授で、ニューヨーク・タイムズの人気コラムニストでもあるフランク教授の著書ということで、よくありがちなアメリカ的な成功指南書なのかと思って読み始めた。

偶然や運の果たす役割

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特に、邦題が『成功する人は偶然を味方にする』となっているので、偶然さえも自分の力でコントロールできるという意味なのかと誤解しそうだが、実際には成功者に自分の成功をもっと謙虚に受け止めるよう諭すと同時に、才能や努力といった個人の力だけではどうにもならない社会的な問題を解決し、幸運な社会を作るための公共政策的な提案を行っている経済学の本である。

それで改めて原題を見てみると、「Success and Luck : Good Fortune and the Myth of Meritocracy」(成功と運:幸運と実力主義という神話)となっていて、邦題とは微妙にニュアンスが違う。この原題から読み取れるように、著者は成功に至る過程で運が果たす役割の重要性に焦点を当て検証しているのである。

他方、本書に関するネット上の書評や感想を見てみると、成功を左右するのは個人の才能や努力ではなくて、結局のところ偶然や運なのだと、身も蓋もない解釈しているものが多く見られたが、それも本書の理解としては正しくない。

著者の言わんとしていることは、才能と努力なしに成功するのは難しいが、才能があって努力をしても必ずしも成功できる訳ではなく、生まれや育ちも含めて、実際にはそこに数多くの偶然や幸運が関わっており、決して個人の力だけで成功した訳ではないという、両者の中間辺りのニュアンスなのである。要は、かつてナポレオンが言ったように、「すぐれた能力も、機会が与えられなければ価値がない」ということである。

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