本稿でのランキング500位(510社)までの企業のうち、2013年4月に入社した新入社員の男性と女性の人数で、女性のほうが男性より多かった企業は41社ある。この41社の女性の定着率平均は93.4%、男性は90.7%だった。ここには、女性の定着率100%の企業が14社含まれており、この14社の男性の定着率は94.1%だった。つまり、女性新入社員が辞めない会社は、男性新入社員も辞めにくいという傾向がみてとれる。
さて、304社以下も見てみると、女性の入社者数が30人以上、50人以上、なかには100人以上という大企業の名前が連なっている。これだけの人数の新入社員がいれば、3年の間には何人かは辞めていっても、ある意味、無理はない。たとえば199人入社のトヨタ自動車では6人、283人入社のJR東日本でも14人が辞めている。
それでも、定着率でみれば95%を超えており、この程度で収まっているというのが正しい評価なのかもしれない。なおランキングでは、420位が定着率90%のラインであり、85.7%でかろうじて500位に滑り込めるレベルだ。
「なでしこ銘柄」は女性新入社員の定着率も高い
2017年3月、2016年度の「なでしこ銘柄」が発表された。これはダイバーシティの観点から女性活躍推進に優れている企業を毎年選出しているもので、2016年度は47社が選出された。このうち、29社がここでのランキング500位までにランクインしており、女性活躍推進に注力している会社は、女性新入社員の定着率でも上位にあるということがわかる。このうち、カルビー、石油資源開発、ワコールホールディングス、日立化成、東京ガス、大阪ガス、東京急行電鉄、日本航空、ANAホールディングスの9社は、女性新入社員の定着率が100%だ。
昨年、「保育園落ちた、日本死ね」という衝撃的なツイートをきっかけに、保育所の待機児童問題が改めてクローズアップされた。安倍晋三政権が女性活躍を成長戦略の1つに掲げていたこともあり、批判の高まりに拍車がかかった面もある。こうした現状を考えると、入社して3年間は全員残ったものの、その後、結婚・出産・育児という人生の節目に差し掛かったとき、どれだけの女性社員が辞めずに自らのワーク・ライフ・バランスを実現できるのか。むしろ本当に考えていかなくてはいけない問題は、こちらのほうかもしれない。
※(2017年5月17日11時30分追記)記事配信後、ランキング1位のJTから「東洋経済第12回CSR調査の回答数字を誤っていた」と連絡があったため、正しい数値を以下に追記します。
・ 2013/4/1入社 女性:41名、男性:137名
・ 2016/4/1在籍 女性:39名、男性:130名
(定着率 女性:95.1%、男性:94.8%)
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