東電、なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか 原発再稼働が前提、史上空前の利益シナリオ

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もっとも、パートナーとして期待されていた東北電力の原田宏哉社長は、東電との事業再編・統合の可能性をきっぱりと否定。関西電力の岩根茂樹社長も「原子力は再編・統合ではなく、現行体制の中でいかに信頼を高めていくかが重要だ」とする。東電と燃料・火力発電分野での事業統合で合意した中部電力の勝野哲社長も、原子力や送配電分野での再編統合について、「どういう効果があるのか見極めが必要だ」という。

廃炉・賠償費用の根拠はあやふや

大破した福島第一原子力発電所の3号機建屋(今年2月、代表撮影)

今回の再建計画で前提とされた廃炉・賠償費用の「22兆円」についてもきわめてあやふやなものだ。特に、廃炉費用の8兆円については、スリーマイル原発事故でかかった費用から推定計算したものに過ぎない。シンクタンクの日本経済研究センターでは、除染で発生した土砂の最終処分費用を、青森県六ヶ所村での低レベル廃棄物処理費用並みと見積もったうえで、廃炉・賠償費用総額を「40年間に50兆~70兆円」と試算している。

廣瀬社長が強調するように、ここ数年、コストダウンが進み、東電が「筋肉質になってきた」ことは確かだ。そうしたことを踏まえ、廣瀬社長は「2014年3月期以降の4年間、(旧再建計画で想定していた)柏崎刈羽の再稼働なしに黒字を出せた。さらに直近の2年間では(廃炉・賠償で)必要とされる5000億円の原資を確保した。おカネがないので廃炉や賠償費用を払えないということはないところまで持ってきた」と胸を張る。

ただし、合理化やコストダウンなどの成果の一方で、火力燃料価格の大幅な下落といった追い風があったことも間違いない。

東電が目指す脱国有化の道のりは極めて厳しい。機構は保有株の売却益として4兆円を捻出し、それを除染費用に充てる計画。それだけ東電は企業価値を上げなければならない。東電があえて明らかにした史上空前の利益達成シナリオは、それを実現できなければ国有化から脱出できない厳しさの裏返しでもある。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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