既婚者が話す「結婚の苦労」は半分ウソである 仕事人間が40歳で電撃結婚してみたら…

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現在の夫である昌介さん(仮名、36歳)とは、友人知人の紹介で出会ったわけではない。年賀状作戦は直接的には結婚につながらなかった。しかし、励まされて支えられるのはありがたいことだ。

「何よりうれしかったのは、『結婚はいいものだよ』と話してくれるご夫婦が多かったことです。うらやましいと心底思いましたね。日本は謙遜の文化なので、独身者の前で幸せな結婚生活を語る人はあまりいません。むしろ、大変な面を話されたりします。婚活宣言をした後で、今までいかに気を使われてきたのかがよくわかりました」

婚活を始めてからは周囲から「表情が柔らかくなった」と褒められることが増えた。親しい同僚からは「いい顔しているね。男が変わったんでしょう?」といじられたりもしたという。そのたびに「変わったどころか1人きりです。誰か紹介してくださいね」と笑いを取りながらお願いできた。

このような好循環の中にいると、自然と魅力も高まり、幸運をも引き寄せるのかもしれない。麻子さんは仕事で取材をしていた際、フェイスブックを通じて外資系IT企業にエンジニアとして勤務する昌介さんと出会う。39歳の秋だった。

「私は言葉を使う仕事なので、日本語の乱れは気になるほうです。フェイスブックに書かれていた昌介さんの日本語はすごく洗練されていました。れる/られるの使い方が完璧なんです」

昌介さんが独身だということはわかったが、取材で出会った相手であるし、年齢も自分より5歳下。当初は結婚相手の候補とは見ていなかった。

「会ったときの第一印象は、テレビ業界にはまずいないタイプ、です。寝癖がホワッと立っていて、洋服は上下ともユニクロ。声は小さい。テレビは10年以上も見ていないそうです。それでも会話はとても楽しかった。小学生へのIT教育など、興味の方向性が似ていたので、話は尽きませんでした」

手もつながぬうちに婚約へ

誘い合って月に何度か食事に行くことが3カ月ほど続いた。手をつないですらいない。友達だと思っていた。すると、昌介さんは告白と同時にプロポーズをしてくれた。

「小林さんの年齢の女性に『付き合ってください』と言うのは失礼だと思います。だから、結婚してください。来週から出張に行くのでその間に考えておいてください」

さすが理系男子。回りくどさや思わせぶりは皆無である。麻子さんは受諾し、半年後に2人は結婚した。

結婚生活は順調そのものだ。麻子さんによれば、「アラフォーの強み」が大いに生かされている。

「相手に求めるよりも、自分に何ができるかを考えるのがアラフォーなのだと思います。相手の言動で何かひっかかることがあってもお互い様なんです。言い方を変えれば伝わることもあります。今までの社会人経験はとても役立ちますね。意見が一致しないとき、仕事の場合は2時間ぐらいで解決しなくちゃいけません。でも、結婚の場合は急がなくていい。10年でも時間をかけてゆっくりとすり合わせていけばいいのです。私はそのことをすごく幸せに感じます」

子どもが大好きだと公言し、小学生向けの教育ボランティアも行っている麻子さん。ただし、昌介さんとの間には「子どもができたらすごく幸せだけど、できなくても2人で楽しく暮らしていく」ことで合意している。

「こんなに子ども好きなのにどうして早く結婚しないのかと周囲に不思議がられた時期もあります。でも、私の場合はアラサーの頃に結婚して母親になっていたら、きっとフラストレーションが溜まってしまったはずです。あの頃は自分のことしか考えていなかったから……。30代後半になって仕事をやり切ったと感じて、時間やエネルギーを自分だけではなく誰かのためにも使いたいと思うようになれました。ただし、結婚相手は誰でもいいわけではありません。好きな人と無理のない生活をすることが大前提です。自分たちの子どもはいなくても、社会の子どもたちにいろいろ教えてあげることはできます。微力ながら子育てに参加していると言えるのではないでしょうか」

手もつながぬうちに婚約をした麻子さんと昌介さん。いま、恋愛と結婚が同時並行に進んでいるらしい。「どんどん好きになる」ことが癖みたいになっているので、10年後はいま以上にお互いを好きになっている確信があるという。うーん、ご馳走さま!

4年前に1度は燃え尽きた仕事。麻子さんはやる気を取り戻しつつある。料理や洗濯を率先してやってくれる昌介さんから、「僕より稼いでね」と背中を押されているからだ。理系の会社員である昌介さんにとっては、社交性が高くて押し出しのいいフリーランサーの活躍を間近で見るのが楽しみなのだろう。いい仕事をして本当にたくさん稼いだら、ちょっと豪華なご褒美を分かち合える。

相手の仕事ぶりに誇りを感じ、その将来に夢を見いだし、支え励ますことに喜びを覚える――。共働き夫婦は、それぞれが生涯を通じて働くからこそ良好な関係が継続するのかもしれない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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