(第1回)2010年卒の就職活動は“楽勝”って本当?

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(第1回)2010年卒の就職活動は“楽勝”って本当?

佐藤孝治

 あなたは「採用人数が増えているのだから、就職活動は楽勝」と考えていないだろうか。たしかに、2000年度に1倍未満であった学生一人当たりの求人倍率は、現在では2.14倍になっており、「学生売り手市場」へ転じたことは間違いない。しかし、たくさんの企業から内定のオファーをもらう人がいる一方で、100社以上エントリーしても内定ゼロという学生がいる。

●苦戦する学生がいるのはなぜか

 売り手市場で苦戦する学生がいるのはなぜか。この理由は採用活動の歴史を振り返ると見えてくる。1980年代後半のバブルと呼ばれた好景気の時代は、できるだけ多くの新卒学生を確保しておいて使い道は後で考えるという企業が続出した。その結果、学生はほとんど就職活動をすることなく内定を獲得でき、人によっては数10社から内定をもらうことができた時代だった。
 そんな状況を一気に変えてしまったのが、1990年代初頭のバブルの崩壊だ。景気の悪化に伴って、企業は厳選採用に方向転換し、一部の優秀な人材を除いては、好きなことや自分に合った仕事をしたい願望を抑えて、とりあえず内定を獲得することに躍起になる学生、どんなに企業をまわっても内定をもらえない学生が多かったのも事実だ。さらに、この時期、バブル時代に大量採用した人員のリストラを行った企業もあった。そんな就職氷河期が約10年続いた。
 そして、ここ数年で経済が緩やかに回復し、採用の現場は再び「学生の売り手市場」へと移行している。しかし、バブル時代のように、誰でも内定を獲得できるわけではないのが特徴だ。リストラを経験した反省から、企業は人材の質を下げてまで採用することはしていない。つまり、誰でもいいから採用したいのではなく、「入社してから確実に活躍できる人」をより多く欲しいのだ。企業は、通年採用や、第二新卒採用にも取り組み、妥協することなくよい人材が獲れるまで採用活動を行う傾向にある。

●学生の売り手市場のチャンスを活かせ

 「この学生は入社後、活躍できる」と面接官がイメージできる優秀な学生にとっては、この売り手市場の就職活動戦線は楽勝と言えるかもしれない。厳選採用時代に、志望企業に入社できなかった先輩には羨ましい状況になっている。しかし、希望の会社に就職できればそれでOKなのだろうか? そうでは無いはずだ。入社してからイキイキと働いて活躍しなければ本当の活動の成功とは言えない。もしかすると、人数が足りず採用されたかもしれない。だとしても構わないと思う。大切なことは、リストラの憂き目にあったバブル世代の先輩と同じ道を辿らないように入社後も努力を続けることだ。10年ぶりに訪れたこのチャンスを活かして納得のいく就職活動を行なってもらいたい。
 次回から、チャンスを活かすことができる学生になるには、どうすればよいのか紹介していこう。
※「大学生のためのインターンシップ成功指南」は、「ジョブウェブ」から提供を受けています。


佐藤孝治(さとう・こうじ)
株式会社ジョブウェブ代表取締役社長
1972年東京都生まれ 早稲田大学社会科学部卒。
就職活動後、大学4年生の96年10月ジョブウェブを創設。 97年7月、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
99年10月、ジョブウェブを法人化。
現在、株式会社ジョブウェブ社長として講演や勉強会などに全国を飛び回っている。学生の就職支援と企業の採用支援を通じて学生と企業の本音コミュニケーションをサポートしている。
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