生命保険の「やめ時」を知っておくべきだ すでに入っている人が考えるべきこと

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代理店に支払われた手数料などが、加入者のもとに戻ることはありません。貯蓄商品の契約継続については、「今後のおカネの増え方」だけを見ることが大切で、数年でもマイナスが続く場合は、おカネを引き上げたほうが良いのではないでしょうか。

保障目的の契約で、解約後の入院等を想像することや、貯蓄商品の解約時の判断について考えると、つくづく保険では、行動経済学で言う「選好の逆転」が起こりやすいと感じます。

おカネの問題に賢く対処することが大切なはずなのに、いつのまにか「気がおさまること」が優先されやすいのです。愚かだ、と言うつもりは毛頭ありません。とてもよくわかる気がするので気をつけたほうが良いだろう、と思うのです。

保険会社に望む3つのこと

保険会社にも顧客のために3点ほど望みたいことがあります。1つは、入院給付金などの「給付見込み」の開示です。契約継続等の判断に欠かせないのは、「受け取るおカネの見込み」と「支払うおカネ」の比較に違いありません。年代別にわかると加入者も助かるはずです。

2つ目は、保険料から引かれる手数料等のコストの開示です。給付見込みは、あくまで見込みですが、手数料は契約時から決まっていることだからです。

保障目的の商品で全体の収支はマイナスになるとしても、給付見込みや手数料の程度問題によって、判断が分かれて良いと思うのです。仮に「60歳以降、保険料から10%のコストが引かれ、残りの90%が給付金として還元される見込みです」といった情報があれば「まあまあ良心的な仕組みだ」と見て、利用し続ける人もいるかもしれません。

最後に、営業担当者や代理店への報酬の支払い方法を見直してほしいと思います。たとえば、貯蓄商品で契約後10年以内の解約の際、払い戻し率が低くなるのは、契約後の1年間で年間保険料の数十%、残りの4年間で10%程度といった報酬体系であることが多く、初期費用がかさむためだと考えられます。しかし、それは販売を促したい会社の都合だろう、と思うのです。

契約の継続年数に応じて、毎年数%の報酬が支払われる仕組みであれば、短期解約でも、それなりの払い戻し額があるはずなのです。加えて、60歳までいつ解約しても元本割れが続くような商品では、満期まで契約が継続する確率も教えるのが親切でしょう。

「保険のやめ時」に関する判断が悩ましいのは、「損失」と「おカネ」の問題だからだと思います。人は利得より損失に大きく反応します。実際、筆者も「解約した後に病気が見つかってショックを受けた」と語るお客様などに接すると動揺します。それだけに、今後も繰り返し原則論に立ち返る必要を感じます。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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